AmazonのKindle Unlimitedにて読書
感想を含めて書いてみる。
既に著者の渡辺仁氏は2016年に64歳と若くて亡くなってしまったが、セブンイレブンの闇を取材したりと起業について本を書いていた人物。自身も起業経験があり読み応えのある内容。起業での天国と地獄をリアルに書いてある。起業して失敗する人間や、起業する人を狙う悪徳(?)なビジネルモデルについても書いてある本、渡辺氏自身も商売に失敗している(定義が難しいが)ので、その観点から駄目だった部分を振り返りインタビューを交えて、起業をする・している人には面白く読めた。
起業でハマる3つの罠
起業には色々失敗があるが、24時間会社を軸に考え、価値観も意識も世間とズレている「会社病」、メディアに書いてあることを鵜呑みして動く「新聞病」、FC(フランチャイズ)の仕組みにまかせっぱなしの「依存病」と書いてあり、会社病については、社内ベンチャーで成功したからといって、それは世間では通じないしあくまで会社がお膳立てしてるためそんな奴が起業してもうまくいかないという。またメディアは何かしらの意図があって書かれているため、それを鵜呑みするのは危険である………と全てに納得の内容。
会社バカの例として、シニア向けパソコンスクールFCの失敗例、テレビとネットでリモート事業、中高年は自己投資せず、パソコンは会社がお金出すという考えだった、つまり市場を間違った。2年で資本金1億3000万円は溶かしたが、テレビ電話介護システムに手を出し借り入れは3億円まで膨れ、その後消息不明。
新聞病の例として、大塚製薬と大正製薬の間違いでメディアの間違いや情報をあてにしないとある。
日本能率協会は、毎年、上場企業の新任取締役の意識調査を行い、
その結果をレポートにして公表している。その1999年の調査では、実に4割もの新任取締役が新聞や雑誌を最も重要な情報源にしていることが判明した。専門雑誌・新聞を入れると、活字情報を重視する「活字バカ」は7割にも上っている。だが、そんなことで本当にいいのだろうか? もちろん、サラリーマン取締役だったら、なぁなぁ主義で誰も責任を取らなくていいのだから、活字を盲信してもまだ救われる。 しかし、一国一城の主となった起業家がこれではまずい。言うまでもなく、いい情報や価値ある情報は、いつの時代もどんなときも「人」が握っている。人を仲介にして情報が入ってくる。金儲けをしたいなら、まず、人に会い、人を口説き落とさなければならないのだ。 だが、現実には人から取るナマの情報より、活字で得た2次情報や3次情報をもとに意思決定する脱サラ起業家が圧倒的に多いのだ。インターネット時代のいまは、ネットに頼り切る「ネットバカ」もこの中に入れてもいいだろう。サラリーマンは、いい情報に接する機会が少ない、との理由もあろう。実際のところ、儲け話にアクセスする方法も手段もない。せいぜい、異業種交流会ぐらいだろう。
だが、それにしても、「新聞に載ったものは100%信じる」「雑誌に出たので間違いない」という、お人好しの活字バカがあまりにも多すぎることは、ここで再度強調しておきたい。生き馬の眼を抜くビジネスの現場で、こんなユルい考えは通用しない。 そもそも新聞やテレビは、事件・事故以外、企業の「表顔」しか報道していない。本当に知りたい「裏顔」は無視されている。事件にしても警察からの発表ものだ。これにはメディアの仕組みや記者の資質などがからんでいる。
フランチャイズは底なし沼
本部の体制が甘いと苦労するし、また加盟店は奴隷という仕組みであると。またその例もいくつか記載。またその契約内容は本当に注意。本部への上納金月100万円で、オーナーの月給8万円なんて例もある。考えればわかるのだが、仕組みを作ったものが一番稼ぐのは当たり前だったり。
フランチャイズ・ショーが定期的に幕張やビックサイト開催されているので、若い時に当時勤めていた社長に連れられて行ったことがあるが、楽に仕組み参加できるというのは魅力だが、本来は自分で作り上げなきゃならないものだと思い知らされる。
感想 リアルに失敗例をかいてあるが、イレギュラー
読み終えて、起業で失敗、地獄を見る事例を丹念に紹介し、現実をリアルに見せてくれる良書ではあるが、じゃどうすればいいの?という点よりは、こういった点は気をつけろと書いてある。そもそも本人も勢いで商売を興した経緯から甘く感じる。特に良くも知らないのに不動産の仲介を行うなんて、知っている私からすれば怖い考えだと思う。商売の仕組みづくりを熱望しながら、失敗と体制を批判する考えが文面からみられるが、逆説的に考えればそれをなし得なかった本人の悲哀を感じた。