ハマサキ・ホールディングの事例から考える、競争激化・不採算店舗・負債過多・FC化再建の限界

「福岡」 (株)ハマサキ・ホールディング(資本金1000万円、北九州市八幡西区竹末1-15-10、代表濱嵜慎二氏)は、6月1日に福岡地裁小倉支部より破産手続き開始決定を受けた。 破産管財人には、油布剛弁護士(ひびき法律事務所、北九州市小倉北区田町14-28、電話093-581-2022)が選任されている。財産状況報告集会期日は9月9日午後1時30分。 当社は、2003年(平成15年)5月に設立された。宅配寿司店、宅配ピザ店のフランチャイザーとして、福岡県や山口県において20店舗を展開し、2021年4月期には年売上高約12億400万円を計上していた。
しかし、大手チェーン店をはじめとする同業者との競合が厳しく、減収傾向で推移。不採算店舗の閉鎖により固定費の削減を行うとともに、人的資源を集約することで経営の立て直しを図ったものの、業績の改善には至らなかった。2024年9月までに全店舗をFC化することでFC収入を主体とした事業形態へ転換したが、資金繰りは悪化の一途をたどり、業績改善の見通しが立たないことから、事業の継続を断念した。
負債は約8億2000万円。帝国DBより

 

宅配寿司・宅配ピザFC本部の破産に見る、直営多店舗モデルからFC本部モデルへの転換失敗

― ハマサキ・ホールディングの事例から考える、競争激化・不採算店舗・負債過多・FC化再建の限界 ―

福岡県北九州市の株式会社ハマサキ・ホールディングが、福岡地方裁判所小倉支部から破産手続き開始決定を受けました。

同社は2003年5月に設立され、宅配寿司店、宅配ピザ店のフランチャイザーとして、福岡県や山口県で20店舗を展開していました。2021年4月期には年売上高約12億400万円を計上しており、地域の宅配飲食業者としては一定の事業規模を持つ企業でした。

しかし、大手チェーン店をはじめとする同業者との競争が厳しく、減収傾向で推移。不採算店舗の閉鎖による固定費削減や、人的資源の集約によって経営の立て直しを図ったものの、業績改善には至りませんでした。

さらに、2024年9月までに全店舗をFC化し、FC収入を主体とする事業形態へ転換しましたが、資金繰りは悪化の一途をたどり、最終的に事業の継続を断念しました。

負債は約8億2000万円です。

今回の事例は、単なる宅配飲食業の競争激化による破産ではありません。

より深く見ると、直営店舗を多く抱える事業モデルから、FC本部収入を中心とする事業モデルへ転換しようとしたものの、過去の負債、固定費、本部維持コスト、加盟店収益力の問題を吸収できなかった事例といえます。

特に重要なのは、全店舗をFC化したにもかかわらず、資金繰りが改善しなかった点です。

直営店をFC化すれば、店舗運営にかかる人件費や賃料、現場管理の負担は軽くなります。しかし、それは同時に、直営店売上が本部売上から消えることも意味します。

直営店であれば、店舗売上の全額が会社の売上として計上されます。

一方、FC店になれば、本部に入るのはロイヤリティ、加盟金、食材供給差益、システム利用料などに限られます。

つまり、FC化はコストを減らす一方で、売上規模も大きく縮小させる可能性があります。

過去に直営20店舗規模で作った借入や債務を、FC本部収入だけで支えられるのか。

ここが、今回の最大の論点です。

1. 企業概要

株式会社ハマサキ・ホールディングは、宅配寿司店、宅配ピザ店を展開していた企業です。

営業エリアは福岡県や山口県が中心で、20店舗を展開していました。

宅配寿司と宅配ピザは、店舗飲食とは異なり、来店型の客席を大きく持たず、注文受付、調理、配達を組み合わせた業態です。

商圏内の認知度、注文のしやすさ、配達スピード、商品品質、価格、クーポン、リピート率が収益を大きく左右します。

同社は2021年4月期に年売上高約12億400万円を計上していました。

この時期は、コロナ禍により外食が抑制される一方、宅配やテイクアウト需要が高まっていた時期でもあります。

そのため、宅配飲食業にとっては追い風があった可能性があります。

しかし、追い風の時期に売上を伸ばせたことと、その後も安定して利益を出せることは別問題です。

宅配需要の拡大は、多くの競合も引き寄せます。

大手宅配ピザチェーン、大手寿司チェーン、デリバリーアプリに登録する飲食店、弁当店、惣菜店、スーパー、コンビニ、冷凍食品、ミールキットなど、顧客の選択肢は一気に広がりました。

需要が増えた市場ほど、競争も激しくなります。

その結果、売上を維持するためには広告費、クーポン、販促、人材確保、システム投資が必要になります。

この競争環境の変化に対して、同社の事業モデルが十分に対応しきれなかった可能性があります。

2. 経営悪化の背景

2-1. コロナ禍の宅配需要拡大後に起きた反動

2021年4月期の売上高約12億400万円という数字は、宅配需要の拡大期と重なります。

コロナ禍では、外食を控える一方で、自宅で食事を楽しむ需要が増えました。

宅配寿司や宅配ピザは、家族の食事、祝い事、週末需要、法人向け注文などを取り込みやすい業態です。

そのため、一時的には市場環境が追い風になった可能性があります。

しかし、コロナ禍で増えた宅配需要のすべてが、恒常的な需要として残るわけではありません。

行動制限が緩和されれば、外食や外出が戻ります。

また、コロナ禍をきっかけに多くの飲食店が宅配やテイクアウトに参入しました。

デリバリーアプリの普及によって、顧客は従来の宅配専門店だけでなく、さまざまな飲食店の商品を自宅で選べるようになりました。

つまり、コロナ禍で市場が広がった一方、その後は競争相手も増え、需要の奪い合いが激しくなったと考えられます。

同社が減収傾向で推移した背景には、宅配需要の反動減と競争激化が重なっていた可能性があります。

2-2. 大手チェーンとの競争で体力差が出た

宅配寿司や宅配ピザは、大手チェーンが強い市場です。

大手は、広告宣伝、ブランド認知、スマホアプリ、Web注文、クーポン配信、ポイント施策、商品開発、仕入れ、物流、人材採用において強みを持っています。

たとえば、顧客が「今日ピザを頼もう」と思ったとき、最初に思い浮かべるのは全国的な大手チェーンであることが多いでしょう。

また、大手は大規模なキャンペーンや割引を行うことができます。

地域企業が同じ土俵で価格競争を行えば、利益率は下がりやすくなります。

宅配寿司でも同様です。

寿司は、品質、鮮度、価格、見た目、配達時間、祝い事・法事などの利用シーンが重要です。

大手寿司チェーンや回転寿司系のテイクアウト、スーパーの寿司、デリバリー対応店と比較されるなかで、地域企業がどのような価値を打ち出せるかが問われます。

同社が大手チェーンとの競合で減収傾向となったということは、価格、認知度、商品力、配達利便性、デジタル対応のいずれか、または複数の面で競争力が低下していた可能性があります。

2-3. 多店舗展開による固定費の重さ

20店舗を展開するということは、単に店舗数が多いというだけではありません。

各店舗に、賃料、人件費、光熱費、車両費、保険料、食材在庫、設備維持費、広告費、店長や責任者の管理コストが発生します。

宅配業態では、さらに配達に関わる費用が重くなります。

・配達スタッフの人件費
・バイクや車両のリース料
・燃料費
・車両保険
・メンテナンス費
・配達中の事故対応
・配達エリア管理
・天候や繁忙時間帯への対応

これらの費用は、注文数が多い時期には吸収できます。

しかし、売上が減少すると、店舗ごとの損益分岐点を下回りやすくなります。

飲食業の多店舗展開では、売上が少し落ちただけで、利益が大きく減ることがあります。

なぜなら、家賃や人件費などの固定的な支出は急には減らせないからです。

20店舗のうち数店舗が赤字になっても、黒字店舗が補えるうちは会社全体では回ります。

しかし、不採算店舗が増えたり、黒字店舗の利益が薄くなったりすると、全社の資金繰りが急速に悪化します。

2-4. 不採算店舗閉鎖の難しさ

同社は不採算店舗の閉鎖によって固定費削減を図りました。

これは正しい方向性です。

しかし、不採算店舗の閉鎖は、実務上は簡単ではありません。

店舗を閉めるには、次のような費用や問題が発生します。

・賃貸借契約の違約金
・原状回復費
・設備処分費
・リース契約の残債
・従業員の配置転換や退職対応
・食材在庫の処分
・地域顧客への対応
・ブランドイメージの低下
・閉鎖店舗の売上消失

つまり、閉鎖すれば翌日からすぐ資金繰りが楽になるとは限りません。

むしろ、短期的には閉鎖費用が発生し、資金流出が増える場合もあります。

また、店舗数が減ると、仕入れ規模も小さくなります。

仕入れ量が減れば、仕入れ単価が上がる可能性があります。

店舗数が減れば、ブランドの露出も減ります。

本部人員やシステム費用が残っていれば、少ない店舗収入で本部コストを支えることになります。

したがって、不採算店舗閉鎖は必要な施策ですが、それだけで再建できるとは限りません。

2-5. 人的資源の集約では解決できない構造問題

同社は人的資源を集約し、経営の立て直しを図りました。

人材不足のなかで、収益性の高い店舗や本部業務へ人員を集中することは合理的です。

しかし、人的資源の集約は、根本的な売上減少や競争力低下を解決するものではありません。

むしろ、現場の人材を集約しなければならないほど、各店舗の運営余力が失われていた可能性があります。

飲食業では、人材不足はサービス品質の低下に直結します。

調理スタッフが足りなければ、提供時間が遅れます。

配達スタッフが足りなければ、注文を受けられません。

店長や責任者が不足すれば、衛生管理、シフト管理、原価管理、スタッフ教育が不十分になります。

人員集約によって一時的にコストを下げることはできます。

しかし、売上を生む現場力まで削ってしまえば、さらに売上が落ちる可能性があります。

コスト削減と売上維持のバランスを誤ると、縮小によって再建するどころか、縮小がさらなる減収を招くことになります。

3. FC化再建がなぜ効かなかったのか

今回の最大の論点は、2024年9月までに全店舗をFC化したにもかかわらず、資金繰りが改善しなかったことです。

3-1. FC化は売上構造を大きく変える

直営店モデルでは、店舗売上がそのまま本部企業の売上になります。

たとえば、直営店舗が年間1億円を売り上げれば、会社の売上として1億円が計上されます。

もちろん、その中から食材費、人件費、賃料、配達費、広告費などを支払う必要があります。

一方、FCモデルでは、店舗売上の全額が本部の売上になるわけではありません。

本部に入るのは、主に次の収入です。

・ロイヤリティ
・加盟金
・システム利用料
・食材や資材の供給差益
・広告分担金
・研修費
・ブランド使用料

このため、FC化すると本部の直接的な店舗運営コストは減りますが、売上規模も大きく減る可能性があります。

問題は、売上が減った後の本部収入で、過去の負債や本部固定費を支えられるかです。

同社の負債は約8億2000万円です。

仮に直営店時代の売上規模を前提に借入や債務を抱えていた場合、FC化後の収入では返済負担が重すぎた可能性があります。

3-2. FC化は「赤字店舗の切り離し」ではなく「加盟店を儲けさせる事業」

FC化を再建策として考える場合、注意すべき点があります。

それは、FC化は単に直営店の負担を外に出すことではないということです。

FC本部は、加盟店を成功させなければなりません。

加盟店が儲からなければ、ロイヤリティは継続しません。

加盟店が苦しめば、本部への不満、契約解除、ブランド低下、クレーム、支援コスト増加につながります。

したがって、FC本部には次の能力が必要です。

・利益が出る店舗モデル
・再現性のあるオペレーション
・強い商品力
・仕入れ支援
・広告販促支援
・人材教育
・売上管理システム
・品質管理
・クレーム対応
・加盟店の経営指導

直営店で苦戦していた店舗をFC化しても、その店舗がFCオーナーのもとで急に高収益化するとは限りません。

むしろ、店舗の採算構造が悪いままであれば、加盟店側が苦しみます。

その結果、本部収入も安定しません。

つまり、FC化は直営赤字の解決策ではなく、黒字化できる店舗モデルがあって初めて機能する成長戦略です。

3-3. 業績悪化後のFC化は信用力の面で不利

FC展開は、加盟希望者に対して「このブランドなら利益が出る」と思ってもらう必要があります。

そのためには、成功店舗の実績が必要です。

・平均月商
・営業利益率
・初期投資回収期間
・必要人員
・商圏条件
・リピート率
・広告費
・本部支援内容

これらを明確に示せることが、FC本部の信用につながります。

しかし、業績が悪化した後にFC化を進める場合、加盟希望者や既存店舗の引き受け先から見て魅力が低くなります。

「なぜ直営でうまくいかなかった店舗をFCにするのか」

「加盟して本当に利益が出るのか」

「本部は今後も支援を続けられるのか」

このような疑念が生じます。

したがって、FC化は業績が悪化してからの延命策として行うより、黒字店舗モデルが確立している段階で計画的に進めるべきです。

3-4. FC化しても本部コストは残る

直営店をFC化すれば、店舗人件費や賃料は減ります。

しかし、本部コストは残ります。

むしろFC本部としての機能を維持するには、別のコストが必要になります。

・加盟店指導員
・商品開発担当
・仕入れ担当
・品質管理担当
・広告販促担当
・経理、契約、法務
・システム管理
・コールセンターや注文システム
・衛生管理指導
・クレーム対応

加盟店が増えれば増えるほど、本部の支援体制が必要になります。

もし本部コストを削りすぎれば、加盟店支援が弱くなります。

加盟店支援が弱くなれば、加盟店の売上や品質が低下し、本部収入も不安定になります。

つまり、FC本部は小さくしすぎても機能しません。

一方で、FC収入に対して本部コストが大きすぎると赤字になります。

このバランス設計が難しいのです。

3-5. 負債8.2億円がFC収入モデルには重すぎた可能性

同社の負債は約8億2000万円です。

2021年4月期の売上高約12億400万円と比較しても、負債は売上の約68%に相当します。

もちろん、売上高と負債額だけで財務状態を断定することはできません。

しかし、飲食業で8億円を超える負債を抱えながら、売上が減少し、直営店をFC化して本部収入主体へ移行する場合、その返済負担は極めて重かったと考えられます。

FC本部収入は、直営店売上よりも小さくなりやすいです。

仮に各FC店からロイヤリティや供給差益を得られたとしても、それが本部固定費と借入返済を十分に上回らなければ、資金繰りは改善しません。

ここで重要なのは、事業モデルを変えるなら、財務モデルも同時に変えなければならないということです。

直営店20店舗の売上規模を前提にした債務を、FC本部収入で返済するのは、構造的に難しい場合があります。

FC化と同時に、金融機関との返済条件見直し、債務圧縮、スポンサー支援、資産売却、本部固定費削減を一体で進める必要がありました。

4. 経営上の問題点

4-1. 多店舗展開時代の成功体験が残った可能性

2021年4月期に年売上高約12億400万円を計上していたという事実は、同社が一定の成功体験を持っていたことを示しています。

20店舗を展開し、地域で宅配寿司・宅配ピザを提供していた実績は大きなものです。

しかし、経営において過去の成功体験は、ときに判断を遅らせます。

市場が伸びていた時期には、店舗数を増やせば売上が伸びる。

宅配需要が強い時期には、広告を打てば注文が入る。

商圏内に競合が少なければ、一定のリピートが取れる。

こうした経験があると、市場が変化しても「もう少し頑張れば戻る」と考えやすくなります。

しかし、競争環境が変わった場合、過去のやり方では戻らないことがあります。

売上が落ちたときに、単なる一時的な不調なのか、構造的な競争力低下なのかを見極める必要がありました。

4-2. 店舗別損益の判断が遅れた可能性

多店舗展開では、店舗ごとの損益を厳しく見る必要があります。

全社売上が大きくても、店舗別に見ると、黒字店舗と赤字店舗が混在していることがあります。

赤字店舗が増えると、黒字店舗の利益で補填する構造になります。

この状態が続くと、全社としては売上があるのに現金が残らない状態になります。

本来、店舗ごとに次のような指標を見る必要があります。

・月商
・粗利益率
・人件費率
・家賃比率
・広告費率
・配達人件費
・配達件数
・平均注文単価
・リピート率
・廃棄ロス
・店長の管理能力
・損益分岐点売上高

赤字店舗については、改善可能性を短期間で判断しなければなりません。

「閉めると売上が減る」ために閉鎖を先送りすると、赤字が累積してしまいます。

4-3. 宅配飲食における原価・人件費・配達費の三重負担

宅配飲食業は、原価、人件費、配達費の管理が難しい業態です。

店内飲食であれば、調理と接客が主な人件費になります。

しかし宅配では、それに加えて配達人員が必要です。

注文が集中する時間帯には配達員が不足し、注文が少ない時間帯には人員が余ります。

配達効率が悪いと、1件あたりの配達コストが高くなります。

また、燃料費や車両維持費もかかります。

宅配寿司や宅配ピザでは、食材原価も軽くありません。

寿司では魚介類、米、海苔、容器などが必要です。

ピザではチーズ、小麦粉、具材、箱、包装資材が必要です。

これらの原材料価格が上昇すれば、販売価格を上げない限り利益は減ります。

一方で、値上げをすれば顧客が大手チェーンや他の飲食店に流れる可能性があります。

つまり、宅配飲食は、売上を維持するための販促費、品質を保つための原価、配達を支える人件費が同時に重くなりやすい事業です。

4-4. 値引き・クーポン依存の危険性

宅配ピザや宅配寿司では、クーポンやキャンペーンが一般的です。

顧客も「割引があるのが普通」と考える傾向があります。

しかし、値引きに依存すると、利益率は大きく低下します。

特に多店舗展開の場合、全店でキャンペーンを行えば、売上は増えても利益が残らないことがあります。

クーポンは短期的な注文獲得には有効です。

しかし、顧客が値引き時にしか注文しなくなると、通常価格での販売力が落ちます。

大手チェーンは大量仕入れや広告規模によって値引きを吸収しやすいですが、中小企業が同じことをすると、利益を削りやすくなります。

同社の業績悪化の詳細は不明ですが、競争激化のなかで販促や値引きによる利益圧迫があった可能性は考えられます。

4-5. FC本部としての収益源が限定的だった可能性

FC本部の収益源は、ロイヤリティだけではありません。

食材供給、資材供給、システム利用料、研修費、広告分担金など、複数の収益源を組み合わせる必要があります。

しかし、加盟店側の利益を圧迫しすぎれば、加盟店経営が成り立ちません。

本部収入を増やそうとすると加盟店負担が重くなる。

加盟店負担を軽くすると本部収入が減る。

このバランスがFCビジネスの難しさです。

同社が全店舗をFC化しても資金繰りが改善しなかったということは、本部収入が負債返済と本部運営コストを支えるには不足していた可能性があります。

5. 経営視点からの考察

経営視点で見ると、同社は「店舗を持って売上を作る会社」から「加盟店を支援して本部収入を得る会社」へ転換しようとしました。

これは、表面的には同じ飲食事業に見えますが、経営の中身は大きく異なります。

直営店運営では、自社で人を採用し、店を運営し、売上を作ります。

FC本部では、加盟店に成功モデルを提供し、加盟店が利益を出すことで本部も収入を得ます。

つまり、FC本部の顧客は、最終消費者だけではありません。

加盟店も重要な顧客です。

加盟店が「この本部に加盟して良かった」と思える収益を得られなければ、FCモデルは続きません。

同社の場合、直営店舗の不採算を減らすためにFC化を進めたとみられます。

しかし、FC化は不採算店舗の処理ではなく、黒字化できる仕組みを加盟店に提供するビジネスです。

もし店舗自体の競争力が低下していたのであれば、運営主体を変えても根本的な改善にはなりません。

また、過去の負債が大きい状態でFC化すると、本部収入が返済に追いつかない可能性があります。

したがって、同社の再建には、FC化だけでなく、債務調整、本部コスト削減、ブランド再設計、加盟店収益モデルの再構築が必要でした。

6. こうすれば良かった可能性がある経営施策

6-1. 売上ピーク後、早期に店舗別収益を再点検すべきだった

2021年4月期に売上高約12億400万円を計上した後、減収傾向が見え始めた段階で、全店舗の収益性を再点検すべきでした。

具体的には、各店舗を次の4分類に分ける必要があります。

・黒字で成長余地がある店舗
・黒字だが成長余地が小さい店舗
・赤字だが改善可能な店舗
・赤字で改善見込みが低い店舗

改善見込みが低い店舗は、早期に閉鎖または譲渡すべきです。

赤字だが改善可能な店舗は、商品、商圏、販促、人員配置、営業時間を見直します。

重要なのは、全店舗を一律に守ろうとしないことです。

多店舗展開の再建では、守る店舗と切る店舗を明確に分ける必要があります。

6-2. 大手と戦わない商圏・用途へ絞るべきだった

大手チェーンとの競争が厳しい場合、同じ商品、同じ価格、同じ販促で戦うべきではありません。

地域企業が狙うべきなのは、大手が取り切れない需要です。

宅配寿司であれば、次のような用途が考えられます。

・法事
・慶事
・地域行事
・企業会議
・高齢者施設
・自治会行事
・家族の記念日
・地元企業の昼食会

宅配ピザであれば、次のような方向性があります。

・地域限定メニュー
・法人向け大口注文
・学校やスポーツ団体向け
・地元食材を使った商品
・ファミリー層向けセット
・大手より柔軟な注文対応

大手が強い個人向けクーポン競争から、用途特化・法人需要・地域密着へ移ることで、価格競争を避けられた可能性があります。

6-3. FC化より先に、成功店舗モデルを作るべきだった

全店舗FC化を進める前に、まず「このモデルなら加盟店が利益を出せる」という成功店舗を作る必要がありました。

確認すべき項目は、次のとおりです。

・月商
・粗利益率
・人件費率
・配達効率
・注文単価
・リピート率
・商圏人口
・必要スタッフ数
・初期投資
・投資回収期間
・本部への支払い後の加盟店利益

このモデルが明確でなければ、FC化しても加盟店は安定しません。

加盟店が安定しなければ、本部収入も安定しません。

FC化は再建策としてではなく、成功モデルの横展開として行うべきでした。

6-4. FC化と同時に債務再編を行うべきだった

直営店からFC本部へ事業モデルを変えるなら、売上構造が変わります。

そのため、過去の借入返済条件も見直す必要があります。

具体的には、金融機関や債権者に対して、次のような再建計画を示す必要がありました。

・FC化後の本部収入見込み
・本部固定費の削減計画
・不採算店舗閉鎖費用
・加盟店数とロイヤリティ収入計画
・食材供給差益の見込み
・返済可能額
・元金返済猶予の必要性
・スポンサー支援の可能性

事業モデルが変わっているのに、返済条件が直営店時代のままであれば、資金繰りは改善しません。

6-5. 本部機能を「小さく強い本部」へ再設計すべきだった

FC本部に必要なのは、大きな組織ではありません。

加盟店が利益を出すために必要な機能に絞った、強い本部です。

たとえば、次の機能に集中すべきでした。

・売れる商品の開発
・食材調達の効率化
・注文システムの整備
・販促テンプレートの提供
・店舗別数字の分析
・加盟店への改善指導
・衛生・品質管理
・地域法人営業の支援

反対に、収益に直結しない本部コストは削減する必要があります。

FC収入主体のモデルでは、本部が重すぎると成立しません。

6-6. 宅配寿司と宅配ピザを同時に維持する意味を再検証すべきだった

同社は宅配寿司店と宅配ピザ店を展開していました。

どちらも宅配業態ですが、商品、原価構造、顧客層、調理オペレーション、競合環境は異なります。

宅配寿司は、鮮度、品質、祝い事・法事需要が重要です。

宅配ピザは、価格、クーポン、若年・ファミリー需要、スピードが重要です。

二つの業態を同時に維持することで、商圏を広げられる一方、商品開発、仕入れ、教育、販促、品質管理が複雑になります。

業績悪化時には、どちらの業態が本当に利益を出せるのかを見極め、片方に集中する選択肢も必要だったかもしれません。

6-7. 事業価値が残っている段階でスポンサーを探すべきだった

20店舗展開の実績、地域での認知、宅配ノウハウ、食材仕入れルート、加盟店網は、一定の事業価値を持っていた可能性があります。

業績が悪化しきる前であれば、同業や食品関連企業への事業譲渡、スポンサー支援、ブランド譲渡、店舗単位の譲渡が検討できたかもしれません。

候補としては、次のような企業が考えられます。

・宅配寿司チェーン
・宅配ピザチェーン
・弁当宅配会社
・食品卸会社
・地域外食企業
・FC本部運営会社
・デリバリー事業者
・惣菜製造会社

資金繰りが完全に詰まってからでは、交渉の余地は狭くなります。

再建可能性が残っている段階で、外部資本や譲渡を検討する必要がありました。

7. 同業・中小企業への示唆

7-1. 多店舗展開は「増やす力」より「見切る力」が重要

店舗を増やすことは、成長の象徴に見えます。

しかし、多店舗展開で本当に重要なのは、赤字店舗を早く見切る力です。

不採算店舗を抱え続けると、黒字店舗の利益まで失われます。

7-2. FC化は魔法の再建策ではない

FC化すれば、直営店の負担は減ります。

しかし、加盟店が儲からなければ本部も儲かりません。

FC化に必要なのは、契約書ではなく、加盟店が利益を出せる再現性のあるビジネスモデルです。

7-3. 売上規模と返済能力は別物

売上12億円があっても、利益と現金が残っていなければ、返済能力はありません。

負債8億2000万円を支えるには、継続的な営業利益とキャッシュフローが必要です。

売上高ではなく、返済原資を見る必要があります。

7-4. 大手と同じ土俵で戦わない

中小企業が大手チェーンと価格、広告、アプリ、クーポンで競うのは不利です。

勝つには、地域密着、法人需要、用途特化、高品質商品、固定客化など、大手が取り切れない市場を狙う必要があります。

8. 今回の教訓 店舗数や売上規模ではなく、利益が残る仕組みと返済できるキャッシュフローこそが、事業継続の生命線である

今回の教訓は、店舗数や売上規模が大きくても、それがそのまま経営の安定を意味するわけではないという点です。

ハマサキ・ホールディングは、福岡県や山口県で宅配寿司店、宅配ピザ店を20店舗展開し、2021年4月期には年売上高約12億400万円を計上していました。

しかし、大手チェーン店をはじめとする同業者との競争が厳しく、減収傾向で推移しました。

不採算店舗の閉鎖、人的資源の集約、全店舗FC化という再建策を実行したものの、資金繰りの改善には至りませんでした。

ここで重要なのは、同社が何も対策をしなかったわけではないということです。

店舗閉鎖も行っています。

人員集約も行っています。

FC化による事業モデル転換も行っています。

それでも破産に至ったという点に、この事例の難しさがあります。

つまり、対策の方向性が間違っていたというより、対策のタイミングが遅かった可能性があります。

また、過去の負債が重すぎて、事業モデル転換だけでは支えきれなかった可能性もあります。

同社にとって重要な分岐点は、売上が減収傾向に入った初期段階だったと考えられます。

この時点で、店舗別採算を厳しく見直し、赤字店舗を早期に整理し、大手と競合する低採算領域から離れ、法人需要や地域特化型の高利益商圏へ転換する必要がありました。

また、FC化についても、業績悪化後の延命策ではなく、黒字店舗モデルが明確な段階で計画的に進めるべきでした。

FC本部になるということは、店舗運営をやめることではありません。

加盟店を成功させる会社になることです。

加盟店が利益を出せる商品、仕入れ、販促、教育、システムを提供できなければ、FC収入は安定しません。

そして、事業モデルを変えるなら、財務構造も同時に変える必要があります。

直営20店舗時代の負債を、FC本部収入で返済できるのか。

本部コストはFC収入に見合っているのか。

加盟店は継続して利益を出せるのか。

この検証が不十分であれば、FC化は再建策になりません。

多店舗展開において本当に重要なのは、店舗数ではありません。

利益が出る店舗を、管理できる範囲で持つことです。

FC化において本当に重要なのは、加盟店数ではありません。

加盟店が利益を出し続け、本部も適正な収入を得られる仕組みです。

今回の事例は、飲食業やFCビジネスに関わる経営者に対し、次の問いを投げかけています。

その店舗は、本当に利益を出しているのか。

その売上は、値引きや過剰な販促で作られたものではないか。

赤字店舗を閉める判断が遅れていないか。

FC化後の本部収入で、過去の負債を返済できるのか。

加盟店が本当に儲かるモデルになっているのか。

大手と同じ土俵で消耗戦をしていないか。

事業を大きくすることと、事業を持続させることは違います。

売上を作る力と、利益を残す力も違います。

店舗を増やす力と、赤字店舗を切る力も違います。

FC化する力と、加盟店を成功させる力も違います。

ハマサキ・ホールディングの破産は、成長期に作った店舗網と負債が、市場環境の変化によって重荷に変わる怖さを示しています。

経営において大切なのは、うまくいっている時期にこそ、次の悪化局面を想定しておくことです。

店舗別利益を見ているか。

借入返済後に現金が残るか。

FC加盟店が儲かる仕組みになっているか。

本部は小さく強い組織になっているか。

市場が変わったときに、すぐ縮小・転換できるか。

これらを平時から確認しておくことが、多店舗飲食業やFCビジネスを継続するための基本です。

今回の最大の教訓は、売上規模や店舗数に安心してはいけないということです。

本当に見るべきなのは、店舗ごとの利益、本部の固定費、加盟店の収益性、そして負債を返済できるキャッシュフローです。

そこを見誤ると、売上12億円規模の企業であっても、資金繰りから崩れていくことになります。

投稿者 kato

これはテスト画像ですよ。テストです。

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