民泊清掃業者の破産に見る、インバウンド需要と人件費負担の難しさ
― one paperの事例から考える、清掃代行・リネン交換・運転資金管理の課題 ―
(同)one paper(資本金100万円、品川区荏原1-5-8、代表社員藤下敦史氏)は、7月8日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。
破産管財人には、鬼島佑太弁護士(宮下総合法律事務所、中央区銀座7-13-6、電話03-6264-3222)が選任されている。財産状況報告集会期日は10月2日午後1時30分。
当社は、2023年(令和5年)9月に設立された。東京都内を中心に民泊向けの清掃業務を手がけ、リネンやタオルの交換、トイレットペーパーなど消耗品の補充および買い出しなどを行い、初年度決算となる2024年8月期は利益を計上していた。
しかし、人件費をはじめとした経費負担が重く、2025年8月期には赤字に転落していた。借入金で運転資金を賄っていたものの業況は改善せず、資金繰りは悪化。2026年4月末に事業を停止していた。
負債は債権者約10名に対し約1500万円。
帝国DBより
1. 経営悪化の背景
1-1. 民泊向け清掃業務を中心とした事業
同社は、東京都内を中心に民泊向けの清掃業務を手がけていたとされています。
民泊運営では、宿泊者の入れ替わりごとに清掃、ベッドメイク、リネン交換、タオル交換、消耗品補充、ゴミ処理、室内確認などが必要になります。
特に東京のように宿泊需要が多いエリアでは、民泊物件の運営を支える清掃代行業には一定の需要があると考えられます。
民泊オーナーや運営代行会社にとって、清掃品質はレビューや稼働率に直結します。
部屋がきれいであることはもちろん、チェックイン時間までに確実に清掃を終えること、備品切れを防ぐこと、忘れ物や破損を確認することも重要です。
その意味で、同社が手がけていた業務は、民泊運営の裏側を支える実務的なサービスだったと思われます。
1-2. 初年度は利益を計上していた事業
同社は、2023年9月に設立され、初年度決算となる2024年8月期には利益を計上していたとされています。
設立から間もない段階で利益を計上していたことから、当初は一定の受注を確保し、比較的順調に事業を始められていた可能性があります。
コロナ禍後の観光需要回復やインバウンド需要の増加により、東京都内の宿泊関連サービスには追い風があったと考えられます。
民泊清掃は、物件数や宿泊回転数が増えれば受注機会も増えます。
そのため、事業開始時には、民泊需要の回復を背景に成長余地があったのではないでしょうか。
一方で、銀行や経営コンサルの視点では、初年度黒字だけで事業の安定性を判断することは難しい面があります。
創業初期の黒字は、代表者自身の稼働、低い固定費、一時的な受注、外注費や人件費の未成熟などによって出る場合もあります。
重要なのは、その利益が継続的に再現できる収益構造だったかどうかです。
同社の場合、翌2025年8月期には赤字に転落していたとされるため、初年度の黒字が長期的な利益体質につながっていたかについては、慎重に見る必要があると思われます。
1-3. 人件費を中心とした経費負担
同社は、人件費をはじめとした経費負担が重かったとされています。
民泊清掃では、清掃スタッフの人件費が大きな割合を占めます。
宿泊者のチェックアウト後から次のチェックインまでの限られた時間で作業する必要があるため、時間指定や急な依頼に対応できる人員体制が求められます。
また、複数の物件を回る場合には、移動時間や交通費も発生します。
清掃道具、洗剤、リネン、タオル、トイレットペーパー、ティッシュ、シャンプー類などの消耗品も必要です。
買い出しや補充も業務に含まれていたとされるため、単なる清掃時間だけでなく、準備や移動、備品管理の手間もかかっていたと考えられます。
清掃単価が十分でなければ、作業件数が増えても利益が残りにくくなります。
特に人件費が上がる局面では、見積単価や契約条件を見直さなければ、赤字になりやすい業態だったのではないでしょうか。
1-4. 赤字転落と借入金による運転資金補填
同社は、2025年8月期に赤字に転落していたとされています。
その後、借入金で運転資金を賄っていたものの、業況は改善しなかったとの情報があります。
清掃業務は、日々の人件費や交通費、消耗品費が先に発生します。
一方で、取引先からの入金が月末締め翌月払いなどであれば、資金回収まで時間差が生じます。
この間を埋めるために運転資金が必要になります。
ただし、銀行目線では、この借入金が「一時的な資金不足を補う運転資金」だったのか、「赤字を穴埋めするための資金」だったのかが重要になります。
赤字の状態で借入金に頼ると、借入は一時的な資金繰りの穴埋めにはなっても、根本的な採算改善にはつながりません。
清掃単価、人件費、移動効率、消耗品負担、契約条件を見直さなければ、借入で補った資金も次第に不足していった可能性があります。
1-5. 設立から短期間での事業停止
同社は、2026年4月末に事業を停止していたとされています。
2023年9月設立とされているため、比較的短期間での事業停止だったと考えられます。
初年度は利益を計上していたものの、翌期には赤字となり、借入金で運転資金を賄っても改善しなかったとされています。
これは、事業の需要そのものがなかったというより、採算設計や人員体制、契約単価、資金繰り管理が成長スピードに追いつかなかった可能性を示しているように思われます。
民泊市場は成長性がある一方で、清掃代行業者にとっては現場対応力と採算管理が問われる分野です。
需要が増えている業界でも、利益が残る単価で受けなければ、事業継続は難しくなってしまうのではないでしょうか。
2. 経営上の問題点
2-1. 労働集約型ビジネスの採算管理
民泊清掃は、人が現場に行って作業する労働集約型のビジネスです。
作業件数が増えれば売上は増えますが、その分だけ人件費、交通費、管理工数も増えます。
そのため、売上だけでなく、1件あたりの作業時間、移動時間、備品費、スタッフ単価を細かく管理する必要があります。
清掃1件あたりの売上が高く見えても、移動や買い出し、リネン管理まで含めると利益が薄くなることがあります。
同社の場合、人件費をはじめとした経費負担が重かったとされており、案件別の採算が崩れていた可能性があります。
2-2. 民泊清掃の単価設定の難しさ
民泊オーナーや運営代行会社は、清掃品質を求める一方で、清掃費用を抑えたい事情があります。
宿泊者から清掃費を受け取る場合でも、価格競争があるため、清掃単価を簡単に上げられないことがあります。
しかし、清掃業者側では、人件費、移動費、備品補充、リネン交換、買い出しなどの費用が発生します。
特に都内では、移動時間や人件費が高くなりやすいと考えられます。
このため、清掃料金に含める範囲を明確にし、追加作業や買い出し、緊急対応には別料金を設定する必要があったと思われます。
曖昧な契約条件のまま対応範囲が広がると、作業するほど利益が薄くなってしまうのではないでしょうか。
2-3. 人員確保とシフト管理の負担
民泊清掃では、宿泊者のチェックアウトと次のチェックインの間に作業を完了する必要があります。
そのため、短時間に複数物件の清掃が集中することがあります。
週末、連休、観光シーズンなどは需要が増える一方で、平日は件数が減ることもあります。
この需要の波に合わせてスタッフを確保することは簡単ではありません。
人員を多く抱えれば固定費が増えます。
人員を絞りすぎれば、急な清掃依頼や繁忙期に対応できません。
このシフト管理と人員確保の難しさが、経費負担や受注対応力に影響していた可能性があります。
2-4. 消耗品補充・買い出しを含む業務範囲の広さ
同社は、トイレットペーパーなど消耗品の補充および買い出しも行っていたとされています。
これは、民泊オーナーにとって便利なサービスです。
しかし、清掃業者側から見ると、作業範囲が広がります。
買い出し、在庫確認、補充、領収書管理、立替払い、移動時間などが発生します。
これらを清掃料金に十分反映できていなければ、サービスとしては喜ばれても利益は残りにくくなります。
付帯サービスを増やす場合には、料金表と作業範囲を明確にする必要があったのではないでしょうか。
2-5. 借入金による運転資金補填の限界
同社は、借入金で運転資金を賄っていたものの、業況が改善しなかったとされています。
運転資金の借入は、一時的な資金不足を補うには有効です。
しかし、赤字案件が多い状態では、借入を増やしても根本的な改善にはなりません。
清掃単価が低く、人件費や経費を吸収できない構造であれば、受注を続けるほど資金が減っていきます。
この段階では、借入による延命ではなく、契約単価、案件選別、対応エリア、人員体制の見直しが必要だったと思われます。
2-6. 銀行から見た追加借入の難しさ
銀行の視点で見ると、赤字転落後に追加借入を行うには、返済原資が明確である必要があります。
一時的な入金遅れや受注増に伴う立替資金であれば、運転資金として説明しやすい面があります。
しかし、清掃1件あたりの採算が合っていない状態で資金不足が生じている場合、借入金は成長資金ではなく、赤字補填資金に近くなります。
この場合、銀行側は「追加融資をしても、どこから返済するのか」を厳しく見ます。
清掃単価を上げられるのか、赤字案件を整理できるのか、人件費や移動コストを抑えられるのか、定期契約で安定収益を作れるのかが問われます。
同社の場合、借入金で運転資金を賄っていたものの業況が改善しなかったとされているため、追加借入によって改善する事業構造が見えにくくなっていた可能性があります。
この点は、金融機関の融資判断ではかなり重く見られる部分ではないでしょうか。
3. 経営視点からの考察
今回の事例は、民泊市場の拡大に伴う周辺サービスであっても、労働集約型の業務では採算管理が非常に重要になることを示していると考えます。
one paperは、東京都内を中心に民泊向けの清掃業務を手がけていたとされています。
リネンやタオルの交換、トイレットペーパーなどの消耗品補充、買い出しまで行っていたとの情報があります。
民泊運営において、清掃は宿泊者の満足度やレビューに直結します。
そのため、清掃代行業には一定の需要があると考えられます。
また、初年度決算となる2024年8月期には利益を計上していたとされ、創業当初は一定の受注と採算を確保できていた可能性があります。
しかし、2025年8月期には赤字に転落し、人件費をはじめとした経費負担が重くなっていたとされています。
民泊清掃は、一見すると需要が伸びる業種に見えます。
しかし、実際には、限られた時間内での作業、人員確保、移動、備品補充、リネン管理、緊急対応など、現場負担が大きい事業です。
受注件数が増えても、清掃1件あたりの利益が薄ければ、会社全体の資金繰りは改善しません。
特に都内では、人件費や移動コストが高くなりやすく、清掃単価とのバランスが重要になります。
銀行や経営コンサルの視点では、今回の問題は単純な需要不足というよりも、単価設定、原価管理、運転資金管理、借入返済計画のバランスが崩れていた可能性があると考えられます。
民泊需要そのものには一定の追い風があったとしても、清掃代行業者が十分な価格決定力を持てなければ、人件費や移動コストの上昇を吸収することは難しくなります。
同社にとって重要だったのは、清掃業務を単なる作業として受けるのではなく、作業範囲、追加料金、移動効率、スタッフ配置、備品管理まで含めて設計し、返済原資が見える収益構造にすることだったのではないでしょうか。
4. こうすれば良かった可能性がある経営施策
4-1. 清掃1件あたりの原価を細かく把握する
民泊清掃では、1件ごとの採算管理が重要です。
清掃料金だけでなく、実際にかかる作業時間や移動時間を含めて利益を確認する必要があったと考えます。
- 清掃作業時間
- 移動時間
- 交通費
- リネン・タオル交換費
- 消耗品補充費
- 買い出し時間
- スタッフ人件費
- 管理者の確認工数
この原価を把握したうえで、赤字になる物件や契約条件を見直す必要があったと思われます。
4-2. 対応エリアを絞り、移動効率を高める
東京都内を中心に民泊清掃を行っていたとされていますが、対応エリアが広がるほど移動時間が増えます。
清掃業務では、移動時間も実質的なコストです。
物件が点在していると、1日に対応できる件数が減り、人件費や交通費が重くなります。
そのため、対応エリアを絞り、同じエリア内の物件をまとめて受けることが重要だったと考えます。
エリア集中型にすれば、移動時間を減らし、清掃件数を増やしやすくなります。
広く受けるよりも、利益が残る地域に集中する判断が必要だったのではないでしょうか。
4-3. 買い出し・消耗品補充を別料金化する
消耗品の補充や買い出しは、民泊オーナーにとって便利なサービスです。
しかし、清掃料金に含めてしまうと、作業時間や立替負担が膨らみます。
そのため、次のように料金を分ける必要があったと思われます。
- 基本清掃料金
- リネン交換料金
- 消耗品補充手数料
- 買い出し代行料
- 緊急対応料金
- 当日依頼の割増料金
- 遠方物件の移動料金
サービス内容を明確にすることで、便利さを収益に変えられた可能性があります。
4-4. 定期契約とスポット契約を分ける
民泊清掃では、定期的に発生する清掃と、急なスポット清掃があります。
定期契約は売上の見通しを立てやすい一方、スポット清掃は割高に設定しなければ採算が合いにくくなります。
同社にとっては、安定した民泊運営会社や複数物件オーナーとの定期契約を増やすことが重要だったと考えます。
一方で、単発依頼や急な依頼については、通常料金より高めに設定する必要があります。
契約形態ごとに料金と対応範囲を分けることで、収益性を改善できた可能性があります。
4-5. スタッフ採用とシフト管理を仕組み化する
清掃業務は人材確保が事業の土台になります。
繁忙期やチェックイン前の短時間に清掃が集中するため、シフト管理が重要です。
スタッフを増やしすぎると人件費が重くなり、少なすぎると受注に対応できません。
そのため、物件数や予約状況に応じて必要人員を見える化する仕組みが必要だったと思われます。
- 物件別の清掃頻度
- 曜日別の作業件数
- 繁忙期の必要人数
- スタッフ別の担当エリア
- 当日欠員時の代替要員
- 清掃品質チェック体制
人件費が重くなっていたのであれば、採用そのものよりも、稼働率と配置効率を見直す必要があったのではないでしょうか。
4-6. 借入前に赤字案件を整理する
同社は、借入金で運転資金を賄っていたものの、業況が改善しなかったとされています。
このような場合、借入を増やす前に、赤字案件や低採算案件を整理する必要があったと考えます。
清掃単価が低い物件、移動時間が長い物件、買い出し負担が大きい契約、急な依頼が多い顧客などを見直す必要があります。
赤字案件を抱えたまま資金を借りても、資金繰りの改善にはつながりにくくなります。
まずは利益の出る契約だけに絞り、事業規模を小さくしてでも採算を立て直す判断が必要だったのではないでしょうか。
4-7. 追加借入に頼る前に、返済原資を明確にする
銀行や経営コンサルの視点で見ると、追加借入が可能かどうかよりも、その借入をどのように返済するのかが重要になります。
運転資金の借入は、受注増加や一時的な入金遅れを補う目的であれば、事業継続を支える資金になります。
しかし、清掃1件あたりの採算が合っていない状態で借入を続けると、借入金は成長資金ではなく、赤字補填資金に近くなります。
この場合、銀行側から見ると、追加で資金を出しても返済原資が生まれにくいと判断される可能性があります。
特に、赤字転落後に業況が改善していなかったとされる点を考えると、単に運転資金を追加するだけでは、資金繰りの根本改善にはつながりにくかったと思われます。
追加借入を検討するのであれば、清掃単価の改定、赤字案件の整理、対応エリアの絞り込み、買い出しや消耗品補充の別料金化、定期契約の確保などにより、返済原資を作る計画を示す必要があったのではないでしょうか。
4-8. 維持するなら、赤字案件を切って小さく黒字化する
事業を維持するためには、借入で売上規模を保つよりも、まず赤字案件を整理し、小さくても利益が残る形へ切り替える必要があったと考えます。
民泊清掃では、清掃単価が低い物件、移動時間が長い物件、買い出し負担が大きい契約、急な依頼が多い顧客ほど、採算が悪化しやすくなります。
こうした案件を抱えたまま受注件数を増やすと、売上は増えても人件費や交通費、消耗品費が膨らみ、資金繰りは改善しにくくなります。
維持を図るのであれば、まず案件ごとの採算を見直し、利益の残る物件と赤字になる物件を切り分ける必要がありました。
- 清掃単価が低すぎる契約は値上げ交渉する
- 移動時間が長い物件は撤退を検討する
- 買い出しや補充業務は別料金にする
- 緊急対応や当日依頼は割増料金にする
- 定期契約の物件を優先する
- 対応エリアを絞って移動効率を上げる
売上規模を一時的に落としてでも、利益の残る案件だけに絞ることで、資金流出を止めることが先決だったと思われます。
銀行や経営コンサルの視点では、追加借入よりも先に、赤字案件の停止と黒字案件への集中が求められる局面だったのではないでしょうか。
4-9. 民泊運営会社との契約条件を見直す
民泊清掃業者が安定して事業を続けるには、民泊オーナーや運営代行会社との契約条件が重要になります。
清掃業務だけでなく、リネン交換、タオル交換、消耗品補充、買い出し、破損確認、忘れ物対応などを含める場合、作業範囲を明確にしておかなければなりません。
便利なサービスとして幅広く対応しても、料金に反映できなければ、作業するほど利益が薄くなります。
そのため、契約条件として、基本清掃料金、追加作業料金、消耗品補充手数料、買い出し代行料、緊急対応料金、遠方物件の移動料金を分ける必要があったと考えます。
また、月間清掃件数が一定数を下回る顧客については、最低保証料金を設定することも選択肢になります。
民泊清掃は、宿泊レビューを支える重要な業務です。
単なる作業代行ではなく、民泊運営の品質維持サービスとして位置づけ、適正単価で契約し直す必要があったのではないでしょうか。
5. 同業・中小企業への示唆
民泊清掃は、インバウンドや観光需要の回復に伴い、需要が見込まれる分野です。
しかし、需要があることと、利益が残ることは別です。
清掃業務は人件費、移動時間、消耗品、リネン管理、緊急対応などの負担が大きく、料金設計を誤ると赤字になりやすい事業です。
同業の中小企業にとっては、1件あたりの原価管理、エリア集中、追加料金の設定、定期契約の確保、スタッフ配置の最適化が重要になります。
また、金融機関から見た場合、赤字転落後の借入は慎重に見られます。
追加借入で事業を維持するには、単に「資金が足りない」という説明ではなく、どの案件を改善し、どの契約を値上げし、どの費用を削減し、どの売上から返済するのかを示す必要があります。
民泊オーナーや運営代行会社に対しては、清掃品質だけでなく、レビュー向上、備品管理、緊急対応、稼働率維持に貢献するサービスとして価値を伝える必要があります。
単なる清掃代行ではなく、民泊運営の品質を支えるパートナーとして契約単価を設計することが求められるのではないでしょうか。
6. 今回の教訓
民泊需要が伸びても、清掃1件ごとの採算が崩れれば事業は続きにくい
今回の教訓は、民泊市場に成長余地があっても、現場作業の人件費や移動コストを吸収できる料金設計がなければ、清掃代行業は継続しにくいという点にあります。
one paperは、東京都内を中心に民泊向けの清掃業務を手がけ、リネンやタオルの交換、消耗品の補充、買い出しなども行っていたとされています。
初年度決算となる2024年8月期には利益を計上していたとの情報があり、創業当初は一定の需要を取り込めていた可能性があります。
しかし、人件費をはじめとした経費負担が重く、2025年8月期には赤字に転落したとされています。
借入金で運転資金を賄っていたものの、業況は改善せず、2026年4月末に事業を停止したとの情報があります。
民泊清掃は、宿泊者の満足度やレビューを支える重要な仕事です。
しかし、作業は時間との勝負であり、移動、リネン交換、備品補充、買い出し、緊急対応なども含めると、見た目以上に手間がかかります。
清掃料金にそれらのコストを十分に反映できなければ、受注件数が増えても利益は残りにくくなります。
また、銀行や経営コンサルの目線では、赤字転落後に借入金で運転資金を賄っていた点も重要です。
借入で一時的に資金をつないでも、清掃1件あたりの採算が改善しなければ、返済原資は生まれにくくなります。
同社にとって重要だったのは、追加借入で売上規模を維持することではなく、赤字案件を整理し、対応エリアを絞り、追加作業を別料金化し、小さくても黒字になる形へ切り替えることだったのではないでしょうか。
一言でまとめるなら、民泊清掃は需要のある仕事ですが、人件費と移動コストを吸収できる料金設計と返済原資の見える資金計画がなければ、作業件数が増えるほど資金繰りを圧迫する要因にもなってしまうと思われます。
