郷土料理居酒屋の破産に見る、コロナ後の客足回復難と赤字体質の長期化
― all-getの事例から考える、居酒屋多店舗運営・固定費削減・借入依存・資産売却の限界 ―
「熊本」 (有)all-get(資本金900万円、熊本市中央区下通1-11-2、代表友口義美氏)は、7月28日に熊本地裁より破産手続き開始決定を受けた。
破産管財人には、江越和信弁護士(三浦・江越法律事務所、熊本市中央区草葉町4-20、電話096-324-1070)が選任されている。財産状況報告集会期日は11月30日午前11時。
当社は、2004年(平成16年)3月創業、2006年(平成18年)3月に法人改組された。熊本市内に「おるげんと」の屋号で、食材にこだわった郷土料理を提供する居酒屋を運営していた。熊本市内に居酒屋3店舗を展開、一定の認知度を有していた。
しかし、新型コロナの影響により集客が低迷したことで業況は悪化。コロナ禍の収束後も客足は戻らず、帯山店を閉鎖することで固定費を削減していた。その後も同業との競合が激化する状況が続き赤字体質が常態化、債務超過に陥っていた。2024年頃より取引先への支払い遅延が発生し金融機関からの借入金を導入することでしのいでいた。2026年7月に社有不動産を売却して資金繰りの改善を図ったが、好転には至らず、同月24日に自己破産を申請していた。
負債は債権者約192名に対し約1億4400万円。
帝国DBより
1. 経営悪化の背景
1-1. 熊本市内で一定の認知度を持っていた居酒屋運営業者
同社は、熊本市内に「おるげんと」の屋号で、食材にこだわった郷土料理を提供する居酒屋を運営していたとされています。
熊本市内に居酒屋3店舗を展開し、一定の認知度を有していたとの情報があります。
郷土料理を提供する居酒屋は、地元客だけでなく、観光客、出張客、宴会、会食、県外からの来訪者などを取り込める業態です。
熊本らしい食材や料理を打ち出せることは、一般的な居酒屋との差別化にもつながります。
複数店舗を展開していたことから、一定の集客力や地域でのブランド認知はあった可能性があります。
一方で、居酒屋業態は、夜間需要、宴会需要、スタッフ確保、食材原価、家賃、光熱費に左右されやすい事業です。
店舗数が増えるほど売上機会は広がりますが、同時に固定費と運営負担も増えます。
1-2. コロナ禍による集客低迷
同社は、新型コロナの影響により集客が低迷し、業況が悪化したとされています。
居酒屋業態は、コロナ禍で大きな影響を受けた業種の一つです。
外出自粛、時短営業、宴会自粛、観光客や出張客の減少により、夜間の飲食需要は大きく落ち込んだと考えられます。
特に郷土料理居酒屋の場合、県外客、会社宴会、接待、グループ利用などが売上の柱だった可能性があります。
こうした需要が減少すると、店舗の家賃、人件費、光熱費、仕入費用を吸収することが難しくなります。
コロナ禍で一時的に売上が落ちただけでなく、その後の消費行動や宴会需要の変化も影響していたのではないでしょうか。
1-3. コロナ収束後も客足が戻らなかった状況
同社は、コロナ禍の収束後も客足が戻らなかったとされています。
飲食店にとって、ここは大きな分岐点です。
コロナ禍の影響が一時的であれば、営業再開後の客足回復によって再建できる可能性があります。
しかし、客足が戻らない場合、以前の店舗数や人員体制、メニュー構成、営業時間を維持することは難しくなります。
コロナ後は、宴会の減少、二次会需要の縮小、少人数利用の増加、外食頻度の低下、物価高による節約志向など、居酒屋を取り巻く環境が変化した可能性があります。
熊本市内で一定の認知度があっても、以前と同じ客数や単価が戻らなければ、収益構造を作り直す必要があったと思われます。
1-4. 帯山店閉鎖による固定費削減
同社は、帯山店を閉鎖することで固定費を削減していたとされています。
赤字店舗を閉鎖し、固定費を下げることは、飲食店再建では重要な判断です。
店舗を閉めれば売上は減りますが、その店舗が赤字であれば、家賃、人件費、光熱費、仕入ロスなどの資金流出を止められます。
このため、帯山店閉鎖は、事業規模を縮小しながら採算を改善しようとした動きだったと考えられます。
しかし、その後も赤字体質が常態化し、債務超過に陥っていたとされています。
つまり、1店舗の閉鎖だけでは、既存債務や残存店舗の赤字を吸収するには不十分だった可能性があります。
1-5. 競合激化と赤字体質の常態化
同社は、その後も同業との競合が激化する状況が続き、赤字体質が常態化していたとされています。
居酒屋業界は、個人店、チェーン店、専門店、郷土料理店、焼肉、海鮮、カジュアル業態など、競合が多い分野です。
コロナ後に外食需要が完全には戻らないなかで、限られた客数を各店で取り合う状況になっていた可能性があります。
競争が激しくなると、値引き、クーポン、飲み放題、メニュー拡充、広告費などが必要になり、利益率は下がりやすくなります。
また、食材費、人件費、光熱費が上昇するなかで、十分に価格転嫁できなければ、売上があっても利益が残りません。
赤字体質が常態化していたという点から、単なる一時的な集客不足ではなく、店舗運営の採算構造が崩れていた可能性があります。
1-6. 支払い遅延と借入金による資金繰り維持
同社は、2024年頃より取引先への支払い遅延が発生し、金融機関からの借入金を導入することでしのいでいたとされています。
取引先への支払い遅延は、資金繰りが相当厳しくなっていたサインです。
飲食店では、食材仕入、酒類、備品、家賃、人件費、税金、社会保険料などの支払いが継続的に発生します。
仕入先への支払いが遅れると、取引条件の悪化、納品停止、信用低下につながる可能性があります。
銀行や経営コンサルの視点では、この段階で借入金が成長資金だったのか、赤字補填資金だったのかが重要になります。
赤字体質が常態化している状態で借入金を導入していた場合、借入は事業拡大ではなく、支払いをつなぐための資金になっていた可能性があります。
この状態では、返済原資を作る具体策がなければ、追加借入による維持は難しくなっていきます。
1-7. 社有不動産売却でも改善に至らなかった状況
同社は、2026年7月に社有不動産を売却して資金繰りの改善を図ったものの、好転には至らなかったとされています。
不動産売却は、一時的に資金を確保する手段になります。
しかし、赤字運営が続いている場合、売却資金は既存の支払い、借入返済、滞納解消に使われ、すぐに不足する可能性があります。
銀行や経営コンサルの視点では、資産売却は再建策そのものではなく、再建までの時間を作る手段です。
資産を売却しても、店舗の赤字構造や返済原資不足が改善しなければ、資金繰りは再び厳しくなります。
同社の場合、不動産売却によっても好転しなかったとされることから、事業そのものの採算改善が追いついていなかった可能性があります。
1-8. 負債約1億4400万円の重さ
同社の負債は、債権者約192名に対し約1億4400万円とされています。
債権者数が約192名と多い点から、金融機関だけでなく、仕入先、取引業者、関係先など多くの相手に債務が広がっていた可能性があります。
飲食業で多くの取引先に支払いが広がると、事業継続の信用維持が難しくなります。
また、債務超過に陥っていたとされており、借入や支払い猶予だけで再建するには厳しい財務状況だったと思われます。
売上回復が見込めず、赤字体質が続き、資産売却でも改善しなかった段階では、事業継続の判断は非常に難しくなっていたのではないでしょうか。
2. 経営上の問題点
2-1. コロナ後の需要変化への対応
同社は、コロナ収束後も客足が戻らなかったとされています。
ここには、居酒屋業態全体の構造変化があった可能性があります。
コロナ前のような大人数宴会、二次会、長時間滞在の需要が戻りにくくなれば、従来型の居酒屋モデルは採算が悪化します。
一方で、少人数利用、短時間利用、食事重視、観光客向け、テイクアウト、予約利用など、需要の形は変わっていた可能性があります。
以前の客足回復を待つだけではなく、新しい利用動機に合わせた店舗設計が必要だったと考えられます。
2-2. 多店舗運営による固定費負担
同社は、熊本市内に居酒屋3店舗を展開していたとされています。
多店舗運営は、ブランド認知や売上拡大につながる一方で、家賃、人件費、光熱費、設備維持費、管理人員などの固定費を増やします。
客足が十分にある時期には、複数店舗展開は成長戦略になります。
しかし、集客が低迷すると、複数店舗の固定費が一気に重くなります。
帯山店を閉鎖していたとされますが、それでも赤字体質が常態化したという点から、残存店舗でも十分な利益が出ていなかった可能性があります。
2-3. 食材へのこだわりと原価管理の難しさ
同社は、食材にこだわった郷土料理を提供していたとされています。
食材へのこだわりは、居酒屋としての魅力や差別化につながります。
特に郷土料理では、地元食材や名物料理の品質が集客力になることがあります。
一方で、食材にこだわるほど原価管理は難しくなります。
仕入価格が上がっても、メニュー価格へ十分に転嫁できなければ、粗利益率が低下します。
また、来店客数が読みにくい場合、仕込み量と食材ロスの管理も重要になります。
同業との競合が激化するなかで、価格を上げにくく、原価だけが上がる状態になっていた可能性があります。
2-4. 支払い遅延が示す信用低下リスク
2024年頃より取引先への支払い遅延が発生していたとされています。
飲食店にとって、仕入先との信用は非常に重要です。
食材や酒類、消耗品が安定して入らなければ、営業そのものに影響します。
支払い遅延が続くと、現金取引への変更、納品停止、取引条件の悪化、仕入価格上昇などにつながる可能性があります。
銀行や経営コンサルの視点では、支払い遅延は資金繰り悪化の末期的なサインとして見ます。
この段階では、借入で支払いをつなぐだけでなく、赤字店舗や赤字メニューを整理し、資金流出を止める必要があったと思われます。
2-5. 借入金が赤字補填に回っていた可能性
同社は、金融機関からの借入金を導入することでしのいでいたとされています。
借入金は、本来、設備投資や一時的な運転資金、成長資金として使われる場合には事業継続を支えます。
しかし、赤字体質が常態化している状態で借入を行うと、既存の支払いを埋めるための赤字補填資金になりやすくなります。
銀行から見ると、この状態では返済原資が見えにくくなります。
追加融資を受けるには、店舗別の黒字化計画、固定費削減、価格改定、人件費率改善、返済可能額を示す必要があります。
赤字の原因を整理せずに借入でしのぐ状態が続くと、最終的に返済負担がさらに重くなってしまうのではないでしょうか。
2-6. 資産売却が再建策にならなかった可能性
社有不動産を売却して資金繰りの改善を図ったものの、好転には至らなかったとされています。
資産売却は、手元資金を確保する効果があります。
しかし、資産売却だけでは事業の収益構造は改善しません。
売却資金を使って過去債務や滞納を整理しても、店舗が赤字のままであれば、また資金不足が発生します。
銀行や経営コンサルの視点では、資産売却は、赤字構造の改善や事業縮小と同時に行うことで効果を持ちます。
不動産売却で時間を作った間に、店舗再編、メニュー見直し、固定費削減、債務整理を進める必要があったのではないでしょうか。
3. 経営視点からの考察
今回の事例は、地域で認知度を持っていた居酒屋運営業者であっても、コロナ後の客足回復が進まず、赤字体質が長期化すると、借入や資産売却だけでは事業継続が難しくなる可能性を示していると考えます。
all-getは、熊本市内で「おるげんと」の屋号により、食材にこだわった郷土料理居酒屋を運営していたとされています。
熊本市内に3店舗を展開し、一定の認知度を有していたとの情報があります。
しかし、新型コロナの影響で集客が低迷し、コロナ収束後も客足が戻らなかったとされています。
その後、帯山店を閉鎖して固定費削減を行ったものの、同業との競合激化もあり、赤字体質が常態化し、債務超過に陥っていたとの情報があります。
飲食業では、知名度があることと、利益が残ることは別です。
一定の常連客や地域認知があっても、家賃、人件費、食材費、光熱費、借入返済を差し引いた後に現金が残らなければ、事業は続きません。
銀行や経営コンサルの視点では、この事例で重要なのは、借入で資金繰りをつないだ点と、社有不動産売却でも改善に至らなかった点です。
借入金が、黒字化までの一時資金であれば再建に役立つ可能性があります。
しかし、赤字体質が常態化した状態では、借入金は赤字補填に回りやすく、返済原資を作ることが難しくなります。
また、不動産売却は一時的な資金確保にはなりますが、店舗運営そのものが赤字であれば、資金流出を止めることはできません。
今回の事例では、事業を維持するには、売上回復を待つよりも、店舗別採算を見直し、赤字店舗や低採算メニューを整理し、小さくても黒字化できる体制へ早く切り替えることが重要だったのではないでしょうか。
4. こうすれば良かった可能性がある経営施策
4-1. 店舗別損益を早期に見直す
多店舗運営の飲食店では、会社全体の売上ではなく、店舗別の採算を確認する必要があります。
同社は3店舗を展開していたとされ、帯山店を閉鎖して固定費を削減していたとの情報があります。
この判断は必要だったと考えられますが、さらに早い段階で各店舗の採算を細かく把握する必要があったと思われます。
- 店舗別売上
- 店舗別営業利益
- 家賃比率
- 人件費率
- 食材原価率
- 光熱費
- 曜日別・時間帯別売上
- 宴会比率
赤字店舗を残したまま営業を続けると、黒字店舗の利益まで吸収されます。
売上規模を守るよりも、利益が残る店舗へ絞ることが重要だったのではないでしょうか。
4-2. 赤字店舗を切って小さく黒字化する
赤字体質が常態化していたとされるため、店舗数を維持することよりも、赤字流出を止めることが先だったと考えます。
飲食店では、店舗を閉めると売上は減ります。
しかし、赤字店舗であれば、閉鎖によって家賃、人件費、光熱費、仕入ロスを削減できます。
事業を維持するには、売上規模を落としてでも、黒字になる店舗だけに集中する判断が必要です。
- 赤字店舗の閉鎖
- 営業時間の短縮
- 平日営業の見直し
- 少人数利用向けの客単価改善
- 人員配置の最適化
- 固定費の低い店舗への集中
銀行や経営コンサルの視点では、追加借入よりも先に、赤字店舗を止めて月次キャッシュフローを黒字化できるかが重要になります。
4-3. 郷土料理の強みを高利益メニューへ再設計する
同社は、食材にこだわった郷土料理を提供していたとされています。
これは、競合店との差別化につながる強みです。
しかし、食材原価が高く、価格転嫁できなければ、強みであるはずのこだわりが利益を圧迫します。
そのため、郷土料理を単に提供するのではなく、高利益メニューやコース商品に再設計する必要があったと考えます。
- 観光客向け郷土料理コース
- 少人数宴会向けセット
- 地元食材を使った高単価メニュー
- 原価率の低い名物料理
- 予約制コース
- テイクアウト・土産品化
こだわりを利益に変えるには、原価率、客単価、注文率、ロス率を管理する必要があります。
魅力あるメニューを残しつつ、利益の出ないメニューは整理する判断が必要だったのではないでしょうか。
4-4. 宴会依存から少人数・観光客・予約型へ切り替える
コロナ後に客足が戻らなかったとされる背景には、宴会や大人数利用の減少があった可能性があります。
居酒屋業態では、宴会需要が減ると売上が大きく落ち込みます。
そのため、従来の宴会依存型から、少人数利用や観光客向け、予約型の収益へ切り替える必要があったと考えます。
- 2〜4名向けコース
- 観光客向け熊本郷土料理セット
- 予約限定メニュー
- 地元客向け早い時間帯の食事利用
- カウンター利用の強化
- ホテル宿泊客向け提携
コロナ前の宴会需要が戻る前提ではなく、現在の客層に合わせて店舗運営を作り直す必要があったのではないでしょうか。
4-5. 支払い遅延が出る前に金融機関・取引先と再建計画を共有する
2024年頃より取引先への支払い遅延が発生していたとされています。
支払い遅延が表面化すると、取引先からの信用は大きく低下します。
飲食店では、仕入先との信用が営業継続に直結するため、支払い遅延が出る前に再建計画を共有する必要があったと考えます。
金融機関に対しても、単に資金繰り支援を依頼するのではなく、店舗別損益、閉鎖予定、固定費削減額、返済可能額を示す必要があります。
取引先に対しては、支払い条件の見直し、分割払い、仕入内容の絞り込み、現金仕入への切り替えなどを早期に協議する余地があったと思われます。
支払い遅延が続いてからでは、再建の選択肢は狭くなってしまうのではないでしょうか。
4-6. 借入金を導入する前に返済原資を明確にする
同社は、金融機関からの借入金を導入することでしのいでいたとされています。
銀行や経営コンサルの視点では、ここで重要なのは、借入後にどの利益で返済するのかです。
赤字体質が常態化している状態で借入を行うと、借入金は成長資金ではなく、赤字補填資金になりやすくなります。
追加借入を検討するなら、次のような改善策を同時に示す必要があったと思われます。
- 店舗別赤字の停止
- 閉店による固定費削減額
- メニュー見直しによる粗利益改善
- 人件費率の改善
- 資金繰り表
- 月次返済可能額
- 不動産売却資金の使途
借入で時間を作ることはできます。
しかし、その時間の中で黒字化できなければ、返済負担だけが残ります。
資金を借りることよりも、返済原資を生む体制を作ることが先だったのではないでしょうか。
4-7. 社有不動産売却と同時に事業縮小を進める
同社は、社有不動産を売却して資金繰りの改善を図ったとされています。
不動産売却は、一時的な資金確保としては有効です。
しかし、店舗運営が赤字のままでは、売却資金は過去の支払いや運転資金に消えてしまいます。
そのため、不動産売却は、事業縮小や債務整理と同時に行う必要があったと考えます。
- 売却資金で滞納を整理する
- 残す店舗を限定する
- 赤字店舗を閉鎖する
- 借入返済条件を見直す
- 仕入先との支払い条件を再交渉する
- 売却後の月次黒字化計画を作る
資産売却は、再建の時間を作るための手段です。
その時間を使って事業構造を変えなければ、資金繰り改善にはつながりにくかったのではないでしょうか。
4-8. 事業譲渡や店舗譲渡を早期に検討する
同社は、「おるげんと」の屋号で一定の認知度を有していたとされています。
ブランド、店舗、顧客、スタッフ、メニュー、立地に価値が残っていた場合、事業譲渡や店舗譲渡も選択肢になった可能性があります。
会社全体として債務超過に陥っていても、採算の良い店舗やブランドの一部には引き継ぎ価値が残ることがあります。
資金繰りが限界に近づく前に、同業者、飲食グループ、地元企業、独立希望者などへ譲渡を検討する余地があったかもしれません。
全店舗を維持するのではなく、残せる店舗やブランドだけを切り出す判断が必要だったのではないでしょうか。
5. 同業・中小企業への示唆
居酒屋業態は、地域で認知度があっても、客足の変化や競合激化によって収益が崩れやすい事業です。
特にコロナ後は、宴会需要や夜間需要が以前と同じように戻るとは限りません。
同業の中小飲食店にとっては、売上回復を待つだけでなく、店舗別損益、原価率、人件費率、家賃比率、客単価、曜日別採算を早期に確認することが重要になります。
また、支払い遅延が出た段階では、資金繰りはかなり厳しい状態です。
借入や資産売却で一時的に資金を確保しても、店舗運営そのものが赤字であれば、根本的な解決にはなりません。
銀行や経営コンサルの視点では、追加借入で維持できるかどうかは、赤字店舗を止め、残す店舗で返済原資を作れるかで判断されます。
飲食店では、売上規模や知名度よりも、店舗ごとに利益と現金が残るかを見極めることが重要になるのではないでしょうか。
6. 今回の教訓
認知度のある居酒屋でも、赤字体質が続けば借入と資産売却では支えきれない
今回の教訓は、地域で一定の認知度を持つ飲食店であっても、コロナ後の客足回復が進まず、赤字体質が常態化すれば、借入や資産売却だけでは事業継続が難しくなるという点にあります。
all-getは、熊本市内で「おるげんと」の屋号により、食材にこだわった郷土料理居酒屋を運営していたとされています。
熊本市内に3店舗を展開し、一定の認知度を有していたとの情報があります。
しかし、新型コロナの影響で集客が低迷し、コロナ収束後も客足は戻らなかったとされています。
帯山店を閉鎖して固定費を削減したものの、同業との競合激化が続き、赤字体質が常態化し、債務超過に陥っていたとの情報があります。
2024年頃より取引先への支払い遅延が発生し、金融機関からの借入金でしのいでいたとされています。
さらに、2026年7月には社有不動産を売却して資金繰りの改善を図ったものの、好転には至らなかったとの情報があります。
銀行や経営コンサルの視点では、借入や資産売却は再建までの時間を作る手段です。
しかし、店舗運営そのものが赤字であれば、追加資金は赤字補填に回りやすく、返済原資は生まれません。
同社にとって重要だったのは、客足回復を待つことではなく、店舗別採算を見直し、赤字店舗を早期に整理し、郷土料理の強みを利益の残るメニューや予約型商品へ再設計することだったのではないでしょうか。
一言でまとめるなら、飲食店は知名度やこだわりがあっても、店舗ごとに利益と返済原資が残らなければ、借入や資産売却で時間を作っても資金繰りを支えきれなくなってしまうと思われます。
非常に良い店だったのに非常に残念ですが、またいつか復活することを祈っています。
