昭和電子産業・東京信友の事例から考える、電子部品製造・福祉機器開発・関連会社連鎖の課題

プリント基板製造業者の破産に見る、受注減少と借入負担の限界

― 昭和電子産業・東京信友の事例から考える、電子部品製造・福祉機器開発・関連会社連鎖の課題 ―

「埼玉」 昭和電子産業(株)(資本金1000万円、入間市下藤沢5-1-2、代表吉沼昭夫氏)と、関連会社の(株)東京信友(TDB企業コード:983421672、資本金2000万円、入間市東藤沢1-3-25、同代表)は、8月7日にさいたま地裁川越支部へ自己破産を申請した。

申請代理人は加藤剛毅弁護士(武蔵野合同法律事務所、所沢市東町12-10、電話04-2936-8666)。

昭和電子産業(株)は、1986年(昭和61年)7月に設立され、プリント配線基板の製造を中心に、ICやトランジスタといった各種電子部品の販売も行っていた。主力のプリント基板の製造は、アッセンブリーから調整、検査まで一貫して請け負い、試作品、量産品ともに手がけ、電源機器や自動車用制御機器メーカーなどをエンドユーザーとして営業を展開。2005年3月期には年売上高約3億6800万円を計上していた。

しかし、その後は設備投資需要の減退から得意先の業績が伸び悩み、当社の受注額も徐々にダウン。2021年3月期の年売上高は約2億600万円にとどまっていた。加えて、年商規模に迫る借入金の負担が重く、損益面を圧迫して資金繰りが限界となり、事業の継続が困難となった。

(株)東京信友は、1983年(昭和58年)3月創業、85年(昭和60年)12月に法人改組された福祉機器の販売業者。聴覚障害向けセンサー感知器などの企画・開発を昭和電子産業(株)とともに行い、外注製造し販売していたが、同社に連鎖した。

負債は、昭和電子産業(株)が約2億4800万円、(株)東京信友が約5800万円で、2社合計で約3億600万円。

帝国DBより

1. 経営悪化の背景

1-1. プリント配線基板を中心とした電子部品製造業

昭和電子産業は、プリント配線基板の製造を中心に、ICやトランジスタなどの電子部品販売も行っていたとされています。

主力のプリント基板製造では、アッセンブリーから調整、検査まで一貫して請け負い、試作品と量産品の双方を手がけていたとの情報があります。

プリント基板は、電源機器、自動車用制御機器、産業機器、電子機器などに欠かせない部品です。

また、アッセンブリーから検査まで対応できる体制は、単なる部品加工ではなく、顧客の製品開発や製造工程を支える役割を担っていたと考えられます。

2005年3月期には年売上高約3億6800万円を計上していたとされ、一定の製造能力と取引基盤を持っていた可能性があります。

一方で、電子部品製造業は、取引先の設備投資、製品開発、量産計画、景気動向に強く左右される業種です。

顧客企業の投資や生産が伸び悩むと、基板製造の受注にも影響が出やすかったのではないでしょうか。

1-2. 設備投資需要の減退による受注減少

同社は、その後、設備投資需要の減退から得意先の業績が伸び悩み、受注額も徐々に低下していたとされています。

プリント基板製造は、顧客の新製品開発や設備投資と連動しやすい事業です。

試作品の開発が増えれば、その後の量産案件につながる可能性があります。

反対に、得意先が設備投資を抑えたり、新製品開発を縮小したりすれば、試作も量産も減少します。

特に中小の電子部品製造業者は、大手メーカーや特定業界の投資動向に影響を受けやすい面があります。

同社の場合、電源機器や自動車用制御機器メーカーなどをエンドユーザーとして営業していたとされますが、得意先側の伸び悩みが受注減少につながった可能性があります。

受注減少が一時的なものであれば、短期の資金繰りで乗り切る余地があります。

しかし、長期的に受注額が下がる局面では、設備、人員、借入返済を含めた事業規模の見直しが必要になります。

1-3. 売上高の減少

昭和電子産業は、2005年3月期に年売上高約3億6800万円を計上していたとされています。

一方で、2021年3月期の年売上高は約2億600万円にとどまっていたとの情報があります。

単純に比較すると、売上は約1億6200万円減少しています。

率にすると、ピークとされる時期から4割以上減少した計算になります。

製造業では、売上が減少しても、工場設備、製造人員、検査体制、在庫、外注費、設備維持費などが残ります。

また、試作・量産の両方に対応する場合、幅広い工程管理や品質管理も必要になります。

売上規模が縮小するなかで、従来の製造体制と借入返済を支えることが難しくなっていた可能性があります。

1-4. 年商規模に迫る借入金の負担

同社は、年商規模に迫る借入金の負担が重く、損益面を圧迫していたとされています。

負債は昭和電子産業が約2億4800万円とされています。

2021年3月期の年売上高約2億600万円と比較すると、負債額は年商を上回る水準です。

製造業では、設備投資、運転資金、材料仕入、外注費、在庫確保などで借入が必要になることがあります。

しかし、売上が減少し、利益が薄くなると、借入返済に回せる資金は限られます。

銀行や経営コンサルの視点では、借入が設備投資や受注増加のための成長資金として機能していたのか、それとも赤字や資金不足を補うための資金になっていたのかが重要になります。

受注減少が続くなかで借入負担が重くなれば、追加借入による維持は難しくなっていったと思われます。

1-5. 関連会社・東京信友への連鎖

関連会社の東京信友は、福祉機器の販売業者とされています。

聴覚障害向けセンサー感知器などの企画・開発を昭和電子産業とともに行い、外注製造して販売していたとの情報があります。

この関係を見ると、昭和電子産業は電子部品製造や基板技術を持ち、東京信友は福祉機器の企画・販売を担うような形だった可能性があります。

一見すると、製造技術と販売事業を組み合わせた関連性のある事業展開です。

しかし、昭和電子産業の資金繰りが限界となったことで、東京信友も連鎖したとされています。

関連会社同士で資金、代表者、取引、開発、製造体制が結びついている場合、一方の経営悪化がもう一方に波及しやすくなります。

グループ全体で資金繰りや採算を管理できていたかが問われる事例だったのではないでしょうか。

2. 経営上の問題点

2-1. 受注減少に対する固定費負担

プリント基板製造業は、一定の設備と技術者が必要な事業です。

受注が十分にある時期には、設備や人員が売上を生む基盤になります。

しかし、受注が減ると、設備稼働率が下がり、1案件あたりの固定費負担が大きくなります。

製造設備、検査機器、作業場、品質管理体制、人員を維持するには費用がかかります。

売上が下がっても固定費を同じ割合で減らすことは簡単ではありません。

同社の場合、受注額が徐々に低下するなかで、製造体制と借入返済の負担が重くなっていた可能性があります。

2-2. 得意先の投資動向への依存

同社は、電源機器や自動車用制御機器メーカーなどをエンドユーザーとして営業していたとされています。

製造業では、得意先の業績や設備投資に依存する部分が大きくなります。

得意先が新製品開発や設備投資を抑えれば、試作基板や量産基板の発注も減少します。

特定業界や特定顧客への依存度が高いほど、その影響は大きくなります。

受注減少が続いた場合には、新しい業界や用途への展開が必要になります。

ただし、電子部品製造では品質基準、認証、納期、技術対応、営業開拓が必要であり、簡単に顧客を広げられるものではありません。

既存得意先の需要減少に対して、顧客分散が間に合わなかった可能性があります。

2-3. 試作と量産の両立の難しさ

同社は、試作品、量産品ともに手がけていたとされています。

試作案件は、技術力や対応力を示しやすく、その後の量産受注につながる可能性があります。

一方で、試作は設計変更、少量対応、短納期、調整、検査などの手間がかかりやすい面があります。

量産は、数量がまとまれば売上を作りやすい一方で、価格競争や品質要求、納期管理が厳しくなります。

試作と量産の両方に対応するには、柔軟性と効率性の両立が必要です。

受注額が減少するなかで、試作案件の手間に見合う利益や、量産案件の十分なロット数を確保できなければ、採算が悪化しやすくなります。

2-4. 借入金が返済原資を上回った可能性

昭和電子産業の負債は約2億4800万円とされています。

年商規模に迫る借入金の負担が重かったとされており、売上減少局面では返済原資の確保が難しかった可能性があります。

銀行の視点では、売上高ではなく、営業利益とキャッシュフローからどれだけ返済できるかを見ます。

仮に売上が2億円あっても、材料費、外注費、人件費、設備維持費、税金を差し引いた後に十分な資金が残らなければ、返済は難しくなります。

また、借入金が過去の設備投資や赤字補填に使われていた場合、現在の収益力とのバランスが崩れやすくなります。

返済原資が見えない状態では、追加借入による維持は難しくなっていたのではないでしょうか。

2-5. 関連会社間のリスク連鎖

東京信友は、昭和電子産業とともに聴覚障害向けセンサー感知器などの企画・開発を行っていたとされています。

このような関連会社間の連携は、技術と販売を組み合わせるうえでは有効です。

しかし、資金繰りや取引が密接に結びついている場合、一社の不振がグループ全体に広がります。

昭和電子産業の事業継続が困難になったことで、東京信友も連鎖したとされています。

銀行や経営コンサルの視点では、関連会社ごとに採算、資金繰り、借入、売掛・買掛、保証関係を分けて確認する必要があります。

グループ全体で見て、どの会社が利益を生み、どの会社が資金を消費していたのかを早期に把握する必要があったと思われます。

3. 経営視点からの考察

今回の事例は、一定の技術力を持つ電子部品製造業者であっても、受注減少と借入負担が重なると、資金繰りを支えきれなくなる可能性を示していると考えます。

昭和電子産業は、プリント配線基板の製造を中心に、アッセンブリーから調整、検査まで一貫して対応していたとされています。

試作品と量産品の双方を手がけていたことから、単なる部品販売ではなく、一定の製造技術と品質管理体制を持っていた可能性があります。

しかし、設備投資需要の減退により得意先の業績が伸び悩み、受注額も徐々に低下していたとの情報があります。

製造業では、受注が減ると設備稼働率が下がります。

設備稼働率が下がると、1件あたりの固定費負担が増え、採算が悪化します。

さらに、同社では年商規模に迫る借入金の負担が重く、損益面を圧迫していたとされています。

銀行や経営コンサルの視点では、このような局面で重要なのは、売上を守ることではなく、現在の受注量で返済原資が残る事業体制に作り直すことです。

年商に近い借入がある場合、通常営業で返済できるだけの利益が必要になります。

しかし、受注が減少し、設備稼働率も下がっている状態では、追加借入をしても赤字補填資金になりやすくなります。

また、関連会社の東京信友が連鎖した点からも、グループ全体の資金管理が重要だったと考えられます。

福祉機器の企画・開発という社会的意義のある事業であっても、製造元や関連会社の資金繰りが崩れれば、事業継続は難しくなります。

今回の事例は、技術力や製品開発力だけでなく、受注量、設備稼働率、借入返済、関連会社管理を一体で見なければ、中小製造業の再建は難しいことを示しているのではないでしょうか。

4. こうすれば良かった可能性がある経営施策

4-1. 受注先・製品別の採算を早期に見直す

受注額が徐々に低下していたとされるため、得意先別・製品別の採算管理が重要だったと考えます。

プリント基板製造では、試作、量産、調整、検査、部品販売など、業務ごとに利益率が異なります。

どの案件で利益が残り、どの案件が工数負担になっているのかを明確にする必要がありました。

  • 得意先別売上
  • 得意先別粗利益
  • 試作案件の工数
  • 量産案件のロット数
  • 検査・調整工数
  • 材料費・外注費
  • 入金サイト

売上額だけを追うのではなく、返済原資を生む案件に絞る必要があったのではないでしょうか。

4-2. 設備稼働率に合わせて固定費を見直す

製造業では、設備稼働率が採算を大きく左右します。

受注が減少している場合、設備や人員を過去の売上規模に合わせたまま維持すると、固定費負担が重くなります。

設備の稼働率、保守費、リース料、人員配置を見直し、現在の受注量でも黒字化できる体制にする必要があったと考えます。

場合によっては、一部工程の外注化、設備売却、作業スペース縮小、稼働日の調整なども選択肢になります。

大きな製造体制を維持することよりも、利益が残る小さな体制へ切り替える判断が重要だったと思われます。

4-3. 量産依存から高付加価値の試作・小ロットへ寄せる

同社は、試作品と量産品の双方を手がけていたとされています。

量産品は売上規模を作りやすい一方で、価格競争やロット減少の影響を受けやすい面があります。

受注減少局面では、量を追うよりも、技術対応力を活かした試作、小ロット、高難度案件、短納期対応などに特化する方法も考えられます。

  • 試作基板
  • 小ロット多品種
  • 検査・調整付き案件
  • 修理・改造対応
  • 古い基板の置き換え
  • 開発部門向け短納期案件

もちろん、試作案件は手間がかかるため、適正な技術料を請求する必要があります。

安く請ける試作ではなく、技術対応力を価格に反映することが重要だったのではないでしょうか。

4-4. 福祉機器事業を別採算で管理する

東京信友は、聴覚障害向けセンサー感知器などの企画・開発を昭和電子産業とともに行っていたとされています。

福祉機器は社会的意義があり、ニッチ市場で独自性を持てる可能性があります。

しかし、開発、外注製造、販売、在庫、保守、販路開拓には資金が必要です。

関連会社として運営するのであれば、昭和電子産業の製造業務とは別に、東京信友単体での採算を確認する必要がありました。

  • 製品別売上
  • 開発費
  • 外注製造費
  • 在庫
  • 販売先
  • 保守対応費
  • 回収期間

社会的意義のある製品であっても、採算が見えなければグループ全体の資金繰りを圧迫する可能性があります。

4-5. 関連会社間の資金・保証関係を整理する

昭和電子産業と東京信友は、同じ代表者の関連会社であり、今回連鎖して自己破産申請に至ったとされています。

関連会社がある場合、銀行や経営コンサルは、会社単体だけでなくグループ全体の資金繰りを確認します。

一方の会社がもう一方を支えているのか、売掛・買掛が滞留しているのか、借入保証があるのか、資金移動があるのかを把握する必要があります。

早い段階で、両社の採算と資金を分けて管理し、片方の不振がもう片方に波及しないようにする必要があったと考えます。

特に昭和電子産業の借入負担が重くなっていたのであれば、東京信友の事業継続可能性も別途検討する必要があったのではないでしょうか。

4-6. 追加借入ではなく返済原資を作る再建計画を示す

年商規模に迫る借入金の負担が重かったとされています。

このような状況では、追加借入による維持は簡単ではありません。

銀行から見ると、追加融資を行うには、今後の返済原資が明確である必要があります。

受注が減少しているにもかかわらず、既存の製造体制や関連会社の事業を維持したままでは、借入は成長資金ではなく赤字補填資金に見えやすくなります。

追加支援を得るには、次のような具体策が必要だったと思われます。

  • 赤字案件の整理
  • 設備・人員体制の縮小
  • 高利益案件への集中
  • 関連会社の採算切り分け
  • 不要在庫・設備の現金化
  • 返済条件の見直し
  • 月次キャッシュフローの改善計画

金融機関に対しては、売上を戻す計画だけでなく、どの利益から返済するのかを示す必要があったのではないでしょうか。

4-7. 早期に事業譲渡やスポンサー探索を検討する

プリント基板製造の技術や、福祉機器の企画・開発には、一定の事業価値が残っていた可能性があります。

会社全体として借入負担を支えきれなくても、技術、人材、設備、顧客基盤、製品開発ノウハウを引き継げる先があったかもしれません。

資金繰りが限界に近づく前に、同業製造業者、電子機器メーカー、福祉機器メーカー、販売会社などへの事業譲渡やスポンサー探索を検討する余地があったと思われます。

特に福祉機器事業は、社会的意義があり、製品や販路が残っていれば引き継ぎの可能性も考えられます。

全体を守るより、残せる技術や製品を早期に切り分ける判断が重要だったのではないでしょうか。

5. 同業・中小企業への示唆

中小製造業では、技術力があっても、得意先の投資動向や受注量に左右されやすい面があります。

特にプリント基板製造のように設備と人員が必要な事業では、受注減少時に固定費と借入返済が重くなります。

同業の中小企業にとっては、売上高だけでなく、設備稼働率、案件別採算、得意先別利益、借入返済後のキャッシュフローを確認することが重要になります。

また、関連会社や別事業を持つ場合には、会社ごとの採算と資金繰りを明確に分ける必要があります。

一社の不振がグループ全体へ波及しないよう、保証関係、資金移動、売掛・買掛の滞留を管理することが求められます。

銀行や経営コンサルの視点では、追加借入で維持できるかどうかは、現在の受注量で返済原資が残る体制にできるかで判断されます。

技術力や長年の取引実績があっても、利益と現金が残らなければ、事業継続は難しくなるのではないでしょうか。

6. 今回の教訓

技術力があっても、受注減少と借入負担が重なれば製造業は支えにくい

今回の教訓は、プリント基板製造のような技術を要する事業であっても、受注減少と借入負担が重なると、資金繰りを支えきれなくなるという点にあります。

昭和電子産業は、プリント配線基板の製造を中心に、アッセンブリーから調整、検査まで一貫して請け負っていたとされています。

試作品と量産品の双方を手がけ、2005年3月期には年売上高約3億6800万円を計上していたとの情報があります。

しかし、その後は設備投資需要の減退により得意先の業績が伸び悩み、同社の受注額も徐々に低下したとされています。

2021年3月期の年売上高は約2億600万円にとどまり、さらに年商規模に迫る借入金の負担が重く、資金繰りが限界となったとの情報があります。

製造業では、売上が減っても設備、人員、品質管理体制、借入返済はすぐには小さくできません。

そのため、受注が減少した段階で、設備稼働率、案件別採算、返済原資を早期に見直す必要があります。

また、関連会社の東京信友も連鎖した点から、グループ全体の資金繰り管理も重要だったと考えられます。

銀行や経営コンサルの視点では、追加借入で事業を維持するには、現在の受注量でも返済できる利益構造を示す必要があります。

同社にとって重要だったのは、過去の売上規模や製造体制を維持することではなく、受注量に合わせて小さく黒字化し、技術力を高付加価値案件や事業譲渡につなげることだったのではないでしょうか。

一言でまとめるなら、中小製造業は技術力だけではなく、受注量に合った設備規模と返済原資を管理できなければ、借入負担によって事業継続が難しくなってしまうと思われます。

投稿者 kato

これはテスト画像ですよ。テストです。

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