竹越土木の事例から考える、自治体受注・業歴・固定費・資金繰りの課題

「東京」 (有) 竹越土木(足立区大谷田5-6-16)は、6月10日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。

破産管財人には、古里貴大弁護士(にっぽり総合法律事務所、荒川区西日暮里5-18-8、電話03-5604-5910)が選任されている。債権届け出期間は7月8日までで、財産状況報告集会期日は9月4日午前10時30分。

当社は、1973年(昭和48年)5月創業、78年(昭和53年)9月に法人改組された。東京都や足立区などの自治体から受注を受け、主に下水道管の新設工事および交換・補修工事を手がけ、2020年4月期には年売上高約2億6600万円を計上していた。

しかし、自治体からの受注に依存するなか、同業他社との競争が激しく減収減益が続き、2023年4月期は年売上高約1億5200万円に対し、約1000万円の当期純損失を計上していた。その後も業績の悪化が続き、2024年4月期の年売上高は約7100万円に減少。当期純損失も拡大するなか、資金繰りに支障を来し、自己破産を申請していた。

負債は債権者約7名に対し約6000万円。 帝国DBより

公共工事依存型の老舗土木会社の破産に見る、入札競争と事業構造固定化のリスク

― 竹越土木の事例から考える、自治体受注・業歴・固定費・資金繰りの課題 ―

東京都足立区の有限会社竹越土木が、東京地方裁判所より破産手続き開始決定を受けたとの情報があります。

同社は1973年5月に創業し、1978年9月に法人改組された土木工事業者です。創業から数えると50年以上にわたり事業を継続してきた企業であり、東京都や足立区などの自治体から受注を受け、主に下水道管の新設工事、交換工事、補修工事などを手がけていたとされています。

2020年4月期には年売上高約2億6600万円を計上していたとのことですが、その後は自治体からの受注に依存するなか、同業他社との競争が激しく、減収減益が続いたとされています。

2023年4月期には年売上高約1億5200万円に対し、約1000万円の当期純損失を計上。さらに2024年4月期の年売上高は約7100万円まで減少し、当期純損失も拡大したとの情報があります。

資金繰りに支障を来し、自己破産を申請していたとされています。

負債は債権者約7名に対し、約6000万円とのことです。

今回の事例は、公共工事を主力とする中小土木会社にとって、受注環境の変化や入札競争が経営に大きな影響を与えることを示していると考えます。

加えて、同社が50年以上続いた老舗企業であった点も重要です。

長い業歴は、地域での信用、施工実績、自治体工事への対応経験、協力業者との関係といった大きな強みになります。

一方で、長年続いてきた事業ほど、過去の成功パターンや受注構造が固定化しやすく、環境変化への対応が遅れやすい面もあります。

つまり、50年以上の業歴は、信用の源泉であると同時に、事業構造を変える難しさにもつながっていた可能性があります。

1. 企業概要

竹越土木は、東京都足立区を拠点とする土木工事業者です。

主に、東京都や足立区などの自治体から受注を受け、下水道管の新設、交換、補修工事を手がけていたとされています。

下水道工事は、地域インフラを維持するうえで必要性の高い工事です。

老朽化した下水道管の更新や補修は、都市機能を支える重要な仕事といえます。

同社は50年以上にわたり、こうした公共インフラ関連工事に関わってきた企業だったとみられます。

この長い業歴は、同社にとって大きな強みだったと考えられます。

自治体工事では、施工実績、現場対応力、安全管理、地域での信用、協力業者との関係が重要です。

長年にわたり事業を継続してきたことは、一定の信用や実績があったことを示していると考えられます。

一方で、公共工事は入札制度の影響を受けやすく、受注の安定性が必ずしも保証されるわけではありません。

受注できなければ売上が立たず、受注できても価格競争が厳しければ利益が残りにくくなります。

2. 経営悪化の背景

2-1. 自治体受注への依存

同社は、東京都や足立区などの自治体からの受注を中心に事業を行っていたとされています。

公共工事は、発注元の信用力が高く、代金回収リスクが比較的低いという利点があります。

しかし、受注先が自治体中心になると、発注量、入札結果、予算時期に経営が左右されやすくなります。

特定の発注元や工種に依存している場合、受注が減った際の影響は大きくなります。

民間工事や維持管理、緊急対応工事など、他の収益源を十分に持てていなかった場合、自治体受注の減少が売上急減につながった可能性があります。

2-2. 同業他社との競争激化

公共工事では、同業他社との競争が避けられません。

入札に参加する企業が多くなると、価格競争が強まりやすくなります。

受注を確保するために低い価格で入札すれば、売上は立っても利益が薄くなる可能性があります。

特に土木工事では、人件費、外注費、重機費、資材費、燃料費、安全対策費などが必要です。

これらの費用が上昇するなかで、入札価格を十分に確保できなければ、採算は悪化します。

競争に勝って受注しても、利益が残らない工事であれば、会社の体力を削ることになります。

2-3. 売上の急減

同社は2020年4月期に年売上高約2億6600万円を計上していたとの情報があります。

しかし、2023年4月期には約1億5200万円、2024年4月期には約7100万円まで減少したとされています。

2020年4月期と2024年4月期を比較すると、売上は約1億9500万円減少しており、率にすると約7割以上の減少となります。

土木工事業で売上がここまで減少すると、人員、重機、車両、資材置場、保険、管理費などの固定的な負担を吸収することが難しくなります。

売上が減っても、会社を維持するための費用はすぐには減りません。

そのため、売上減少が赤字拡大につながった可能性があります。

2-4. 長い業歴による事業構造の固定化

同社は50年以上にわたり事業を継続してきた老舗企業です。

長く続いてきたことは、地域での信用や施工実績という強みにつながります。

一方で、長年の事業継続は、事業構造の固定化につながる場合もあります。

たとえば、以前は自治体工事を安定的に受注できていたとしても、入札競争が激しくなれば、同じ受注方法や価格感覚では利益が残りにくくなります。

また、過去の売上規模を前提にした人員体制、車両、重機、協力業者との関係、事務所や資材置場などが残っている場合、売上が急減しても固定費をすぐに下げることは難しくなります。

長い業歴は信用を生む一方で、事業転換を遅らせる要因にもなり得ます。

今回の事例では、公共工事中心で長年成立してきた事業構造を、売上急減や競争激化に合わせて変えることが難しかった可能性があります。

2-5. 赤字の継続と資金繰り悪化

2023年4月期には約1000万円の当期純損失を計上し、2024年4月期には売上減少とともに損失も拡大したとされています。

赤字が続くと、自己資本が減少し、手元資金も不足しやすくなります。

土木工事では、工事に先行して人件費、外注費、資材費、燃料費などが発生します。

入金までの期間があるため、運転資金も必要です。

受注減少と赤字が重なると、次の工事に必要な資金を確保することも難しくなります。

その結果、資金繰りに支障を来したと考えられます。

3. 経営上の問題点

3-1. 受注先・工種の偏り

公共工事を中心とする事業は安定性がある一方、受注先や工種が偏るとリスクも大きくなります。

同社の場合、自治体からの下水道関連工事を主力としていたとの情報があります。

この分野で受注が減少した場合、他の工事分野で補うことが難しかった可能性があります。

道路、舗装、外構、民間設備工事、維持管理、緊急補修など、収益源を分散できていれば、売上減少の影響を抑えられた可能性があります。

3-2. 入札価格と採算管理

公共工事では、受注することが重要ですが、それ以上に採算を確保することが重要です。

低価格で受注すれば、売上は確保できます。

しかし、利益が残らなければ経営改善にはつながりにくいと考えます。

工事ごとに、材料費、外注費、人件費、重機費、現場管理費、安全対策費、予備費を正確に見積もる必要があります。

さらに、工事完了後には、見積原価と実際原価を比較し、赤字工事の原因を分析する必要があります。

3-3. 売上減少に対する固定費調整の難しさ

土木工事業では、売上が減少しても、重機、車両、人員、保険、事務所、資材置場などの固定費をすぐに減らすことは難しい場合があります。

特に長年続いた会社では、過去の売上規模を前提にした体制が残りやすいものです。

2020年4月期の売上高約2億6600万円から、2024年4月期には約7100万円まで減少したとの情報を踏まえると、以前の体制を維持することはかなり難しくなっていたと考えられます。

早期に固定費を見直し、売上規模に合った体制へ縮小する必要があった可能性があります。

3-4. 長年の取引関係が判断を難しくした可能性

50年以上続いた企業では、自治体、協力業者、地域関係者との長年の関係があったと考えられます。

これは事業上の強みである一方、低採算案件や厳しい条件の工事でも、関係維持のために断りにくくなる可能性があります。

また、長年続けてきた工種や営業方法から離れることには、心理的にも実務的にも負担があります。

そのため、民間工事や新しい収益源への転換が遅れた可能性も考えられます。

老舗企業ほど、過去の信用や実績を活かしながらも、環境変化に応じて取引先や工事内容を見直す必要があります。

3-5. 資金繰り管理

公共工事では、入金の確実性は比較的高い一方で、工事期間中の先行支出が発生します。

工事を受注しても、材料費や外注費、人件費を先に支払う必要があります。

赤字が続くなかで運転資金が不足すれば、次の工事を受けること自体が難しくなります。

同社も、赤字拡大と売上減少により、資金繰りが厳しくなっていた可能性があります。

4. 経営視点からの考察

今回の事例は、公共工事を主力とする老舗土木会社が、受注環境の変化と価格競争に対応しきれなかった可能性を示しています。

公共工事は、安定しているように見えます。

しかし、実際には入札競争、発注時期、工事量、予定価格、同業他社の動向によって、収益は大きく変わります。

特に、売上が大きく減少した場合には、単に次の受注を待つのではなく、会社全体の体制を見直す必要があります。

同社の場合、2020年4月期の売上高約2億6600万円から、2024年4月期には約7100万円まで減少したとされています。

この売上規模の変化に対して、人員、設備、車両、固定費、借入返済をどこまで調整できたかが重要だったと考えます。

また、50年以上の業歴は、信用や施工実績という大きな財産です。

しかし、その信用があるからこそ、従来の自治体工事中心の事業構造を維持しようとする力も働いた可能性があります。

老舗企業では、過去の成功体験が強いほど、「これまでのやり方を続ければ戻る」という判断になりやすい面があります。

しかし、競争環境や入札条件が変わった場合、従来のやり方だけでは利益が残りにくくなることがあります。

今回の事例では、業歴の長さを活かしながら、公共工事以外の維持補修、民間工事、小規模工事、緊急対応などへ収益源を広げる必要があった可能性があります。

5. こうすれば良かった可能性がある経営施策

5-1. 工事別採算を徹底する

まず必要だったのは、工事ごとの採算管理です。

受注金額だけでなく、実際に利益が残る工事かどうかを確認する必要があります。

・材料費
・外注費
・人件費
・重機費
・燃料費
・現場管理費
・安全対策費
・追加工事の有無
・工期遅延リスク

これらを工事ごとに管理し、赤字工事の原因を明確にする必要がありました。

5-2. 低採算入札を避ける基準を作る

公共工事では、受注したいあまり低い価格で入札してしまうことがあります。

しかし、低採算工事を続ければ、売上はあっても会社の資金は減っていきます。

最低利益率や最低粗利益額を設定し、それを下回る案件は入札を見送る判断も必要だったと考えます。

5-3. 自治体工事以外の収益源を作る

自治体受注に依存していた場合、受注減少時の影響が大きくなります。

民間向けの小規模土木、外構、排水設備、緊急補修、マンション・工場の配管補修など、周辺領域を開拓する余地があった可能性があります。

公共工事を柱にしつつ、民間の維持補修需要を取り込めれば、売上の下振れを抑えられたかもしれません。

5-4. 老舗としての信用を民間営業にも活かす

50年以上の業歴は、民間営業においても大きな信用材料になります。

「長年、公共工事を手がけてきた施工実績」は、マンション管理会社、工場、店舗、地主、地域事業者に対しても安心材料になり得ます。

たとえば、次のような営業展開が考えられます。

・マンションやアパートの排水設備補修
・工場敷地内の排水・舗装補修
・店舗駐車場や外構の補修
・個人宅の排水・外構工事
・地域事業者向けの小規模土木工事
・緊急補修対応

公共工事で培った実績や技術を、民間の維持補修需要へ転用する余地があった可能性があります。

5-5. 売上減少に合わせて固定費を早期に見直す

売上が大きく減少した場合、過去の売上規模を前提にした体制を維持することは難しくなります。

車両、重機、資材置場、外注体制、事務所費、人員配置などを、現在の売上規模に合わせて見直す必要がありました。

固定費の見直しが遅れると、赤字が拡大し、資金繰りを圧迫します。

5-6. 事業承継・技術承継を早めに検討する

50年以上続いた土木会社では、技術、現場経験、施工実績、協力業者との関係が事業価値になります。

仮に自力での再建が難しくなった場合でも、同業者への事業譲渡、協力会社との統合、技術者や受注先の引き継ぎなどを検討できた可能性があります。

資金繰りが限界に達してからでは、交渉の余地は狭くなります。

老舗企業ほど、事業価値が残っているうちに承継や提携を検討することが重要だと考えます。

5-7. 早期に金融機関や専門家へ相談する

赤字が続き、売上が急減した段階で、早期に資金繰り表を作成し、金融機関や専門家へ相談する必要がありました。

返済条件の見直し、不要資産の売却、事業譲渡、同業者との提携など、資金繰りが限界に達する前であれば選択肢が残っていた可能性があります。

6. 同業・中小企業への示唆

公共工事は安定した仕事に見えますが、入札競争が激しくなると利益が残りにくくなります。

自治体受注に依存している場合、受注減少がそのまま売上減少につながる可能性があります。

そのため、公共工事を主力にしつつも、民間補修や維持管理など、複数の収益源を持つことが重要だと考えます。

また、50年以上の業歴がある企業でも、過去の成功モデルが今後も続くとは限りません。

長い業歴は信用の源泉ですが、事業構造の固定化にもつながる可能性があります。

老舗企業ほど、過去の実績を守るだけでなく、その信用を新しい受注分野へ活かす視点が必要です。

売上が大きく減少した場合には、過去の体制を維持するのではなく、現在の売上規模で黒字化できる体制へ早めに切り替える必要があります。

7. 今回の教訓

長い業歴は信用になるが、過去の成功モデルに縛られるリスクもある

今回の教訓は、公共工事を主力とする会社であっても、受注量と採算を見誤れば経営は厳しくなるという点です。

竹越土木は、東京都や足立区などの自治体から受注を受け、下水道管の新設や交換・補修工事を手がけていたとされています。

創業から50年以上にわたり地域インフラを支えてきた企業だったと考えられます。

長い業歴は、施工実績、地域での信用、現場経験、協力業者との関係といった大きな強みになります。

特に公共工事では、長年の実績や安定した施工能力は重要な信用材料になります。

しかし一方で、長く続いた会社ほど、過去の成功モデルから抜けにくくなる可能性があります。

自治体工事を中心に事業が成立してきた場合、同じ受注先、同じ工種、同じ営業方法を続けることが自然になります。

しかし、入札競争が激しくなり、受注量が減少し、価格面での採算が厳しくなると、従来の方法だけでは利益が残りにくくなります。

同社は2020年4月期に年売上高約2億6600万円を計上していたとの情報がありますが、2024年4月期には約7100万円まで減少したとされています。

この売上急減は、土木工事業にとって大きな打撃です。

人員、車両、重機、資材置場、管理費などの固定費を吸収しにくくなり、赤字が拡大する可能性があります。

ここで必要だったのは、単に次の公共工事受注を待つことではなく、売上規模の変化に合わせて会社の体制を見直すことだったと考えます。

また、50年以上の業歴で培った信用を、自治体工事だけでなく、民間の維持補修、小規模土木、排水設備、外構、緊急補修などへ活かす余地もあったかもしれません。

公共工事は発注元の信用力が高く、代金回収面では安心感があります。

しかし、入札競争が激しくなれば、受注できても利益が薄くなる場合があります。

また、受注できなければ売上が大きく下振れします。

つまり、公共工事であっても、安定経営が保証されるわけではありません。

同社の事例からは、工事別採算の把握、低採算入札を避ける判断、自治体以外の収益源づくり、売上減少に合わせた固定費見直しが重要であると考えます。

さらに、長い業歴を持つ企業ほど、事業価値が残っているうちに、提携、事業承継、同業者との統合などを検討することも重要です。

一言でまとめるなら、長く続いた会社ほど、過去の信用を守るだけでなく、その信用を新しい収益源へ転換する必要があるということです。

投稿者 kato

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