「栃木」 既報、(株)さつき(資本金3000万円、鹿沼市栄町3-33-9、代表塩田智孝氏)は、6月2日に宇都宮地裁より破産手続き開始決定を受けた。
破産管財人には、横須賀徳博弁護士(横須賀法律事務所、宇都宮市栄町6-16、電話028-616-2612)が選任されている。債権届け出期間は7月14日までで、財産状況報告集会期日は9月11日午前10時30分。
当社は、1996年(平成8年)10月に設立された葬儀業者。「メモリアルホール さつき野」の屋号で葬祭ホールを1カ所運営するほか、仏壇仏具の販売を行っていた。一時期、日本料理店も併営していた。
しかし、家族葬を提唱しチェーン展開する企業の台頭や、冠婚葬祭を行わない家庭の増加で業況は悪化。赤字事業であった日本料理店の閉店に際しては代表個人からの借入金について債権放棄を受けるなど、企業の負担を軽減していたが、赤字計上が続いていた。資金繰り多忙のなか、事業の継続は困難と判断し、2026年4月27日までに事業を停止していた。
負債は2025年6月期末時点で約8100万円。帝国DBより
先日はワンマン的な葬儀会社をみたが、今回も確認
葬祭ホール運営会社の破産に見る、家族葬シフトと固定費型ビジネスの限界
― さつきの事例から考える、葬儀業の構造変化・多角化失敗・資金繰り悪化 ―
栃木県鹿沼市の株式会社さつきが、宇都宮地方裁判所から破産手続き開始決定を受けました。
同社は1996年10月に設立された葬儀業者で、「メモリアルホール さつき野」の屋号で葬祭ホールを1カ所運営していました。葬儀運営のほか、仏壇仏具の販売も手がけ、一時期は日本料理店も併営していたとされています。
しかし、家族葬を提唱しチェーン展開する企業の台頭や、冠婚葬祭を行わない家庭の増加により、業況は悪化しました。
赤字事業だった日本料理店の閉店に際しては、代表個人からの借入金について債権放棄を受けるなど、会社の負担軽減を図っていましたが、その後も赤字計上が続きました。
資金繰りが厳しくなるなか、事業継続は困難と判断され、2026年4月27日までに事業を停止しています。
負債は2025年6月期末時点で約8100万円です。
今回の事例は、葬儀業界における構造変化をよく示しています。
かつて葬儀業は、地域に葬祭ホールを構え、一定規模の葬儀を受注し、祭壇、料理、返礼品、仏壇仏具販売などを含めて収益を上げる事業モデルが成り立ちやすい業態でした。
しかし、近年は家族葬、小規模葬、一日葬、直葬の需要が増えています。
葬儀を行わない、またはごく限られた親族のみで見送る家庭も増えています。
この変化は、葬儀単価の低下、会館稼働率の低下、料理や返礼品需要の減少、仏壇仏具販売の縮小につながります。
つまり、葬儀業者にとっては、単に「葬儀件数が減る」という問題ではなく、1件あたりの収益構造そのものが変わっているのです。
1. 企業概要
株式会社さつきは、栃木県鹿沼市に本社を置く葬儀業者です。
1996年10月に設立され、「メモリアルホール さつき野」の屋号で葬祭ホールを1カ所運営していました。
葬儀業務に加えて、仏壇仏具の販売も行っていたほか、一時期は日本料理店も併営していました。
この事業構成から見ると、同社は単に葬儀の施行だけを行う会社ではなく、葬祭ホールを中心に、関連商品の販売や飲食提供まで含めた総合的な葬祭サービスを目指していたと考えられます。
葬儀業では、葬祭ホールを持つことは大きな強みです。
自社施設で葬儀を行えるため、会場手配の自由度が高く、地域での認知にもつながります。
一方で、ホールを保有・運営することは、固定費を抱えることでもあります。
建物の維持費、設備費、光熱費、人件費、清掃費、修繕費、広告費、借入返済などが発生します。
葬儀件数や葬儀単価が一定以上あれば、ホールは収益の柱になります。
しかし、家族葬や小規模葬が増え、会館の稼働率や1件あたり売上が低下すると、ホールそのものが重い固定費になります。
2. 経営悪化の背景
2-1. 家族葬チェーンの台頭
同社の業況悪化要因として、家族葬を提唱しチェーン展開する企業の台頭が挙げられています。
これは非常に重要なポイントです。
家族葬チェーンは、従来型の葬儀に比べ、料金プランを分かりやすく提示し、小規模で費用を抑えた葬儀を前面に打ち出します。
顧客にとっては、次のようなメリットがあります。
・費用が分かりやすい
・小規模で心理的負担が少ない
・親族中心で落ち着いて見送れる
・過度な付き合いや参列対応を避けられる
・Webで情報を比較しやすい
・事前相談がしやすい
従来型の葬儀業者は、地域の信頼や対面相談を強みにしていました。
しかし、家族葬チェーンは、価格の明確さ、ブランド認知、広告力、標準化されたサービスで顧客を取り込みます。
そのため、地域の中小葬儀業者は、「昔から地元にある」というだけでは選ばれにくくなります。
同社も、家族葬チェーンの台頭によって、従来型の葬儀需要を奪われた可能性があります。
2-2. 冠婚葬祭を行わない家庭の増加
もう一つの大きな変化は、冠婚葬祭そのものを簡素化する家庭が増えたことです。
葬儀に関しては、家族葬だけでなく、直葬や火葬式を選ぶケースも増えています。
「親族だけで済ませたい」
「費用を抑えたい」
「形式にこだわらない」
「参列者対応の負担を減らしたい」
「故人の意思で簡素にしたい」
こうした価値観の変化は、葬儀業者の売上構造に直接影響します。
従来型の葬儀では、祭壇、会場、料理、返礼品、供花、送迎、仏壇仏具など、複数の収益機会がありました。
しかし、葬儀が小規模化すれば、これらの付帯売上は減少します。
葬儀件数が同じでも、1件あたりの売上と利益が下がるのです。
特に、葬祭ホールを持つ事業者にとって、これは大きな問題です。
大きな会場を使わない葬儀が増えれば、ホールの価値が低下します。
小規模葬に対応できる専用スペースや価格プランがなければ、固定費だけが残ります。
2-3. 日本料理店併営の赤字
同社は一時期、日本料理店も併営していました。
葬儀業者が料理店を併営すること自体は、必ずしも不自然ではありません。
葬儀後の会食、法事、法要、仕出し、地域の会合などと結びつけることで、葬儀関連需要を取り込む狙いがあった可能性があります。
しかし、記事では日本料理店は赤字事業だったとされています。
飲食店は、葬儀業以上に固定費と変動費の管理が難しい業態です。
人件費、食材費、光熱費、設備費、店舗維持費がかかります。
集客が安定しなければ、すぐに赤字化します。
また、葬儀関連の会食需要が減少しているなかで、飲食店を維持することは大きな負担だった可能性があります。
特に家族葬や直葬が増えると、葬儀後の大人数での会食も減少します。
つまり、葬儀本体の小規模化は、併営する料理店の需要減少にもつながります。
日本料理店の閉店に際して、代表個人からの借入金について債権放棄を受けたという点からも、飲食事業が会社財務を圧迫していたことがうかがえます。
2-4. 代表個人借入の債権放棄でも改善しなかった
代表個人からの借入金について債権放棄を受けたことは、会社の負担軽減策です。
代表者が会社に貸し付けていた資金を返済不要にすることで、会社の債務を減らし、財務内容を改善しようとしたものと考えられます。
これは、経営者として会社を守ろうとした対応です。
しかし、それでも赤字計上が続きました。
ここが重要です。
債権放棄は、過去の負担を軽くする効果があります。
しかし、本業が赤字のままであれば、将来の資金流出は止まりません。
財務改善策と事業改善策は別です。
過去の借入を整理しても、毎月の営業赤字が続けば、資金繰りは再び悪化します。
今回の事例では、代表者の負担軽減策があっても、葬儀業本体や関連事業の収益構造を立て直すには至らなかったと考えられます。
2-5. 資金繰り多忙の状態
記事では、資金繰り多忙のなか、事業継続は困難と判断したとされています。
「資金繰り多忙」という表現は、単にお金が足りないだけでなく、日々の支払いに追われている状態を示します。
葬儀業では、売上が入る一方で、会館維持費、人件費、仕入れ、外注費、車両費、広告費、借入返済、税金などが発生します。
赤字が続くと、入金より支払いが先行し、資金繰りが厳しくなります。
資金繰りに追われると、経営者は将来の改革よりも、目先の支払い対応に時間を取られます。
その結果、価格改定、サービス転換、固定費削減、事業譲渡といった根本的な対策が遅れます。
3. 経営上の問題点
3-1. 葬祭ホール保有型ビジネスの固定費負担
同社は葬祭ホールを1カ所運営していました。
ホールを持つことは、地域での信頼や営業上の強みになります。
しかし、葬儀の小規模化が進むと、ホールの固定費が重くなります。
大規模な葬儀が減り、家族葬や直葬が増えると、広い会場や豪華な設備が必ずしも必要とされなくなります。
にもかかわらず、ホールの維持費は減りません。
・建物維持費
・修繕費
・光熱費
・設備更新費
・清掃費
・保険料
・固定資産関連費用
・借入返済
・最低限の人員配置
これらは、葬儀件数が少なくても発生します。
つまり、ホール保有型ビジネスは、一定の稼働率と葬儀単価を前提に成り立つモデルです。
市場が小規模葬へ移るなかで、その前提が崩れていた可能性があります。
3-2. 家族葬対応の遅れ
家族葬チェーンが台頭したということは、顧客ニーズが変化していたことを意味します。
本来、地域葬儀業者も家族葬に対応することは可能です。
むしろ、地域の慣習や寺院との関係を理解している点では、大手チェーンよりも強みを持てる場合があります。
しかし、家族葬を商品として明確に設計できていなければ、顧客には伝わりません。
必要だったのは、単に「家族葬もできます」と言うことではありません。
・家族葬専用プラン
・分かりやすい料金表
・小規模会場の設計
・追加費用の明確化
・事前相談の導線
・Webやチラシでの情報発信
・直葬や一日葬との違い説明
・葬儀後の手続き支援
こうした形で、顧客が安心して選べる商品にする必要がありました。
3-3. 関連事業の多角化が裏目に出た可能性
同社は、仏壇仏具販売や日本料理店の併営を行っていました。
葬儀業との関連性はあります。
仏壇仏具は葬儀後の需要と結びつきます。
日本料理店は会食や法要需要と結びつきます。
一見すると、葬儀を起点に関連需要を取り込む合理的な多角化に見えます。
しかし、葬儀そのものが小規模化すれば、関連需要も縮小します。
家族葬や直葬が増えると、仏壇仏具の購入、会食、返礼品、法要関連需要も減少する可能性があります。
つまり、関連事業はリスク分散のように見えて、実際には葬儀市場の縮小と同時に悪化する構造だった可能性があります。
特に日本料理店は赤字事業だったとされており、本業を補完するどころか、資金繰りを圧迫していたと考えられます。
3-4. 赤字事業の撤退が遅れた可能性
日本料理店は赤字事業であり、閉店時には代表個人借入の債権放棄まで行われています。
これは、赤字が一定期間累積していた可能性を示しています。
赤字事業は、早期に撤退すれば損失を限定できます。
しかし、撤退が遅れると、赤字が累積し、閉店費用も発生し、会社財務を傷めます。
経営者としては、併営事業に思い入れがある場合や、葬儀との相乗効果を期待している場合、撤退判断が遅れがちです。
しかし、関連事業であっても、採算が取れないものは早期に見直す必要があります。
3-5. 事業規模に対して負債が重かった可能性
負債は2025年6月期末時点で約8100万円です。
葬儀業者としてホールを運営していたことを考えると、設備投資、運転資金、赤字補填、料理店関連の負担などが積み重なっていた可能性があります。
問題は、負債額そのものよりも、返済原資があったかどうかです。
赤字計上が続いていたのであれば、営業活動から返済原資を生み出せていなかったことになります。
代表個人の債権放棄があっても、赤字が続けば資金繰りは改善しません。
これは、過去の借入問題というより、事業そのものが利益を生みにくくなっていたことを示しています。
4. 経営視点からの考察
今回の破産は、葬儀業界の構造変化に対して、ホール保有型・関連事業併営型の従来モデルが耐えられなくなった事例といえます。
かつて葬儀業は、地域の人間関係、寺院とのつながり、葬祭ホール、仏壇仏具、料理、返礼品を組み合わせて収益を上げることができました。
しかし、近年は葬儀に対する価値観が変わっています。
大きな葬儀よりも、身内だけで見送る。
形式よりも費用の分かりやすさを重視する。
葬儀を行わず、火葬だけで済ませる。
仏壇仏具も簡素にする。
法要や会食も小規模化する。
こうした変化は、葬儀業者の収益機会を複数同時に減らします。
葬儀単価が下がる。
会館利用が減る。
料理需要が減る。
返礼品需要が減る。
仏壇仏具販売が減る。
このように、周辺収益まで含めて影響を受けるため、従来型の葬儀業者ほど打撃が大きくなります。
同社は日本料理店の閉店や代表個人借入の債権放棄など、一定の改善策を講じています。
しかし、本業の収益構造そのものが変わらない限り、財務面の一時的な軽減策だけでは再建できません。
ここで必要だったのは、葬儀業の前提を変えることでした。
大きな葬儀を待つのではなく、小規模葬を主力商品にする。
ホールを大規模葬の場ではなく、家族葬専用の安心空間として再定義する。
仏壇仏具販売を従来型から、現代の住環境に合う小型仏壇や手元供養へ変える。
料理店を維持するのではなく、必要時だけ仕出し業者と連携する。
固定費を抱える体質から、外部連携型へ移る。
こうした転換が必要だったと考えられます。
5. こうすれば良かった可能性がある経営施策
5-1. 家族葬専門ホールとして早期に再ブランディングすべきだった
家族葬チェーンが台頭した段階で、同社は従来型の葬祭ホールではなく、地域密着型の家族葬専門ホールとして再設計する必要がありました。
具体的には、次のような施策です。
・家族葬専用プランの明確化
・10名、20名、30名規模の料金表作成
・直葬、一日葬、家族葬の違いを説明
・追加費用が発生する項目の明示
・Webサイトやチラシで価格を公開
・事前相談を強化
・ホール内を小規模葬向けに改装
・地元住民向けの終活相談会を開催
顧客は、葬儀費用に不安を抱きやすいものです。
特に家族葬を検討する層は、「大きな葬儀にしたくない」「費用を抑えたい」「必要なことだけしたい」と考えています。
その不安に対して、分かりやすく答えることが重要でした。
5-2. 日本料理店はもっと早期に撤退すべきだった
赤字事業であった日本料理店は、葬儀業との相乗効果を期待していた可能性があります。
しかし、葬儀の小規模化によって会食需要が減っているのであれば、飲食店を維持する合理性は低下します。
必要だったのは、店舗を自社で抱えることではなく、必要なときに料理を提供できる外部連携です。
・仕出し業者との提携
・地元飲食店との提携
・法事用弁当の外注
・少人数向け会食プランの委託
・料理店スペースの転用または閉鎖
飲食店は人件費、食材ロス、設備維持費がかかります。
赤字が続くのであれば、本業を守るために早期撤退すべきでした。
5-3. 仏壇仏具販売を現代型へ転換すべきだった
仏壇仏具販売も、従来型の大きな仏壇から、小型仏壇、モダン仏壇、手元供養、メモリアルグッズへ需要が変化しています。
住宅事情や家族構成の変化により、大きな仏壇を置かない家庭も増えています。
そのため、同社は仏壇仏具販売についても、従来型の商品構成を見直す必要がありました。
・小型仏壇
・モダン仏壇
・手元供養品
・遺骨ペンダント
・写真立て型供養品
・オンライン供養相談
・墓じまい相談
・法要・相続相談との連携
葬儀後の顧客接点を活かすなら、従来型の仏壇販売ではなく、現代の供養ニーズに合わせた提案が必要でした。
5-4. ホールの固定費を下げる施策を早期に進めるべきだった
ホールを持つことが重荷になっていたのであれば、施設の使い方を見直す必要がありました。
考えられる施策は次のとおりです。
・家族葬専用スペースへの縮小
・一部スペースの賃貸
・地域集会や終活セミナー会場として活用
・法要専用スペースとして活用
・事務所部分の縮小
・固定費の低い運営体制へ変更
・清掃、料理、返礼品などを外部委託化
ホールは葬儀だけに使うのではなく、地域との接点を作る場として活用することも可能です。
ただし、利用率が低いまま維持費だけがかかる場合は、売却や賃貸、提携も含めて検討すべきでした。
5-5. 資金繰りが多忙になる前に金融機関と再建計画を共有すべきだった
資金繰りが厳しくなってから金融機関に相談しても、選択肢は限られます。
赤字計上が続いた段階で、早期に再建計画を作る必要がありました。
計画に含めるべき内容は次のとおりです。
・家族葬への転換計画
・日本料理店撤退計画
・仏壇仏具販売の見直し
・ホール固定費削減
・月次資金繰り表
・借入返済条件の見直し
・代表個人借入の整理
・不要資産の売却
・事業譲渡や提携の検討
債権放棄は有効な財務改善策ですが、それだけでは足りません。
営業赤字を止める具体策とセットでなければ、再建計画としては弱くなります。
5-6. 同業者との提携・事業譲渡を早期に検討すべきだった
同社には、葬祭ホール、地域での認知、顧客基盤、屋号、仏壇仏具販売の取引関係など、一定の事業資産があったと考えられます。
業績悪化が深刻化する前であれば、同業者との提携や事業譲渡を検討できた可能性があります。
・家族葬チェーンとの提携
・近隣葬儀業者へのホール譲渡
・葬儀受付業務の共同運営
・屋号や顧客基盤の承継
・仏壇仏具部門の譲渡
・ホールの共同利用
・従業員や取引先の引き継ぎ
破産に至る前であれば、会社全体を残せなくても、ホールや顧客基盤、地域の葬儀需要を別の形で残す選択肢がありました。
5-7. 葬儀後サービスへ収益源を広げるべきだった
葬儀業者の強みは、遺族との接点を持てることです。
葬儀後には、法要、仏壇、墓、相続、遺品整理、役所手続きなど、多くの課題があります。
同社は仏壇仏具販売を行っていましたが、さらに次のような周辺サービスへ広げる余地がありました。
・四十九日法要相談
・一周忌、三回忌の案内
・墓じまい相談
・永代供養紹介
・相続手続きの士業紹介
・遺品整理業者との連携
・空き家相談
・手元供養商品の販売
・終活相談会
葬儀単価が下がる時代には、1回の葬儀で大きく稼ぐのではなく、葬儀前後の相談を通じて継続的な収益機会を作る必要があります。
6. 同業・中小企業への示唆
6-1. ホールは強みであり、固定費リスクでもある
葬祭ホールは地域での信頼につながります。
しかし、稼働率が下がれば固定費負担になります。
家族葬時代には、大きなホールよりも、小さく使いやすい施設設計が重要です。
6-2. 家族葬は一時的な流行ではなく構造変化
家族葬や直葬の増加は、一時的なブームではなく、価値観と家族構成の変化によるものです。
従来型の葬儀を待つのではなく、小規模葬を主力商品として設計する必要があります。
6-3. 関連事業でも赤字なら早く切る
仏壇仏具や料理店など、葬儀関連事業は相乗効果を期待できます。
しかし、赤字が続くなら本業を傷めます。
関連性があることと、採算が取れることは別です。
6-4. 財務改善だけでは再建にならない
代表個人借入の債権放棄は、会社を守るための大きな対応です。
しかし、本業の赤字が止まらなければ、資金繰りは再び悪化します。
財務改善は、事業構造の改善とセットで行う必要があります。
7. 今回の教訓
葬儀業はなくならないが、従来型の葬儀ビジネスは変わらなければ残れない
今回の教訓は、葬儀業においても、従来型の設備・付帯サービス・地域密着に頼るだけでは、家族葬時代の変化に対応できないという点です。
株式会社さつきは、「メモリアルホール さつき野」を運営し、仏壇仏具販売や日本料理店の併営も行っていました。
地域の葬儀需要を取り込み、葬儀、供養、会食まで含めた総合的なサービスを目指していた企業だったと考えられます。
しかし、家族葬を提唱するチェーン企業の台頭や、冠婚葬祭を行わない家庭の増加によって、従来型の事業モデルは厳しくなりました。
大きな葬儀が減る。会食需要が減る。返礼品や仏壇仏具需要が減る。
ホールの稼働率が下がる。葬儀単価が下がる。
このような変化が同時に起きると、ホール保有型の葬儀業者は固定費を吸収しにくくなります。同社は赤字事業だった日本料理店を閉店し、代表個人からの借入金について債権放棄を受けるなど、企業負担の軽減を図っていました。しかし、その後も赤字計上が続き、資金繰り多忙のなかで事業継続を断念しました。ここで見るべきなのは、会社が何も対策をしなかったわけではないという点です。赤字事業の閉店も行っています。代表個人の債権放棄による財務負担の軽減も行っています。それでも改善しなかったのは、葬儀業本体の収益構造が市場変化に合わなくなっていたからだと考えられます。
この事例で重要な分岐点は、家族葬チェーンの台頭が明確になった段階です。
その時点で、従来型の葬祭ホール運営から、地域密着型の家族葬専門ホールへ早期に転換する必要がありました。また、日本料理店のような固定費の重い関連事業は早期に撤退し、仕出し業者や地元飲食店との外部連携に切り替えるべきだった可能性があります。
仏壇仏具販売についても、従来型の商品だけでなく、小型仏壇、手元供養、墓じまい、終活相談など、現代の供養ニーズへ合わせる必要がありました。葬儀業は、今後も必要な業種です。
しかし、必要とされる形は変わっています。大きな式を行う葬儀から、小さく見送る葬儀へ。形式を重んじる葬儀から、費用と納得感を重視する葬儀へ。葬儀当日だけのサービスから、事前相談と葬儀後の支援まで含めたサービスへ。この変化に対応できなければ、長年地域で事業を続けてきた葬儀業者でも、経営は厳しくなります。今回の事例は、葬儀業者に対して、次の問いを投げかけています。自社のホールは、今の家族葬需要に合っているのか。料金体系は、顧客に分かりやすく伝わっているのか。大きな葬儀が減っても採算が取れる体制になっているのか。
赤字の関連事業を抱え続けていないか。
仏壇仏具販売は、現代の供養ニーズに合っているのか。代表者や会社の資金で赤字を埋めるだけになっていないか。資金繰りが詰まる前に、提携や事業譲渡を検討しているか。地域密着、葬祭ホール、仏壇仏具、会食という従来の強みも、時代に合わせて再設計しなければ、固定費と赤字の要因になってしまいます。さつきの事例は、葬儀業界における構造変化を受け止め、早めに小規模葬・家族葬・終活支援型の事業へ転換する重要性を示しているといえるでしょう。
……とはこの業態から変更できただろうか?
今後葬儀が増えるが、そのお金は本人家族と子供たちが出すことになる。
葬儀屋の次はお寺、とくに駐車場と幼稚園を併設している地方のお寺は消えていくのだろうと予想する。
