「栃木」 (株)サンテーク(資本金5000万円、小山市楢木275-13、代表丸山佳子氏、従業員5名)は、6月11日までに事業を停止し、事後処理を蓬田勝美弁護士(蓬田勝美法律事務所、宇都宮市小幡2-2-11、電話028-621-6651)に一任した。今後は自己破産を申請する見込み。
当社は、1976年(昭和51年)8月創業、79年(昭和54年)2月に法人改組された発泡スチロール製品のメーカー。家電品メーカーや電気機器メーカー、自動車部品メーカーなどを主要顧客に、製品を梱包する際の緩衝材や断熱材として使用する発泡スチロール製品を製造していた。近隣にニーズがある工場が多数あったことが利点となり、ピークとなる2005年12月期には年売上高約2億4500万円を計上していた。
しかし、リーマン・ショックや東日本震災、コロナ禍で受注が下振れするなど業況は安定せず、2024年12月期の年売上高は約1億3900万円にとどまっていた。また、原価の高騰に対し、元来発注メーカーからの強い要請もあり、価格転嫁は思うようにいかず、赤字体質が常態化していた。債務超過状態で資金繰りも切迫し、事業の継続は困難となった。
負債は2024年12月期末時点で約2億2000万円。帝国DBより
発泡スチロール製品メーカーの事業停止に見る、下請け製造業の価格転嫁と資金繰りの限界
― サンテークの事例から考える、原価高騰・受注変動・債務超過の経営課題 ―
栃木県小山市の株式会社サンテークが、2026年6月11日までに事業を停止し、今後は自己破産を申請する見込みとなりました。
同社は1976年8月に創業し、1979年2月に法人改組された発泡スチロール製品メーカーです。
家電品メーカー、電気機器メーカー、自動車部品メーカーなどを主要顧客として、製品梱包時に使用される緩衝材や断熱材などの発泡スチロール製品を製造していました。
近隣に同社製品の需要がある工場が多数あったことが利点となり、ピークとなる2005年12月期には年売上高約2億4500万円を計上していました。
しかし、その後はリーマン・ショック、東日本大震災、コロナ禍などの影響で受注が下振れし、業況は安定しませんでした。
2024年12月期の年売上高は約1億3900万円にとどまり、ピーク時から約1億600万円の減収となっています。率にすると、売上はおよそ43%減少しています。
さらに、原価高騰が続くなか、発注メーカーからの強い要請もあり、十分な価格転嫁ができませんでした。その結果、赤字体質が常態化し、債務超過状態となり、資金繰りも切迫。最終的に事業継続は困難となりました。
負債は2024年12月期末時点で約2億2000万円です。
今回の事例は、典型的な中小製造業の経営課題を示しています。
一定の技術や取引先があっても、主要顧客の生産動向に受注が左右される。
原材料費や電力費、物流費が上がっても、取引先との力関係から価格転嫁が難しい。
設備、人員、工場維持費といった固定費を抱えるなかで、売上が下がる。
利益が出ない状態が続き、借入や支払猶予でしのぐうちに債務超過が進む。
そして、外部環境がさらに悪化すると、資金繰りが限界を迎える。
サンテークの事例は、単なる一社の事業停止ではなく、下請け・部品・包装資材系の中小製造業が抱える構造的な問題を浮き彫りにしています。
1. 企業概要
株式会社サンテークは、発泡スチロール製品を製造するメーカーです。
創業は1976年8月で、1979年2月に法人改組されました。長年にわたり、栃木県小山市を拠点に製造業を営んできた企業です。
同社が手がけていた主な製品は、家電品、電気機器、自動車部品などを梱包する際に使用される発泡スチロール製の緩衝材や断熱材です。
発泡スチロールは軽量で加工しやすく、衝撃吸収性や断熱性に優れているため、精密機器や部品の輸送・保管に使われます。
同社の強みは、近隣に需要のある工場が多数存在していたことです。
工業製品を扱うメーカーが周辺にあれば、梱包材や緩衝材の需要が継続的に発生します。
また、輸送コストや納期対応の面でも、近隣メーカーと取引できることは有利に働きます。
この地域立地の強みを活かし、同社は2005年12月期には年売上高約2億4500万円を計上していました。
しかし、2024年12月期の年売上高は約1億3900万円にとどまりました。
売上はピーク時から約43%減少しています。
製造業において売上が4割以上減少すると、工場維持費、人件費、設備費、借入返済などを吸収することが難しくなります。
特に、製造業は売上が減っても固定費がすぐには減りにくい業態です。
ここに原価高騰と価格転嫁不足が重なったことが、経営を大きく圧迫したと考えられます。
2. 経営悪化の背景
2-1. 外部ショックによる受注の下振れ
同社の業況は、リーマン・ショック、東日本大震災、コロナ禍などの影響を受け、安定しませんでした。
これは、同社の製品が最終消費者向けではなく、メーカー向けの梱包材・緩衝材であったことと関係しています。
家電メーカー、電気機器メーカー、自動車部品メーカーなどの生産量が減れば、それに伴って梱包材の需要も減ります。
つまり、同社は自社の営業努力だけではなく、顧客メーカーの生産計画や市場環境に大きく左右される立場にありました。
リーマン・ショックでは、世界的な需要減少によって製造業全体が大きな影響を受けました。
東日本大震災では、サプライチェーンや物流、生産拠点に混乱が生じました。
コロナ禍では、生産調整、部品不足、物流混乱、需要変動が発生しました。
これらの外部ショックは一度きりではなく、長い時間をかけて企業体力を削ります。
一時的な受注減であれば、内部留保や借入でしのぐこともできます。
しかし、何度も受注が下振れし、業績が安定しない状態が続くと、資金繰りの余力は徐々に失われます。
2-2. 売上規模の縮小
同社の売上高は、2005年12月期の約2億4500万円をピークに、2024年12月期には約1億3900万円まで減少しました。
これは約1億600万円の減少です。
製造業では、売上高が減少しても、設備や工場を維持するための固定費は簡単には減りません。
機械設備、工場建物、電力、修繕、保険、従業員、管理費などは、一定程度必要です。
売上が減少すると、固定費率が上がります。
たとえば、同じ工場、同じ設備、同じ従業員数であっても、売上が2億4500万円あるときと1億3900万円のときでは、1製品あたりに乗る固定費負担が大きく変わります。
さらに、同社は従業員5名とされています。
小規模な体制であっても、製造業では人員を減らしすぎると生産や納期対応ができなくなります。
そのため、売上減少に合わせて柔軟に固定費を下げることは難しかった可能性があります。
2-3. 原価高騰による利益圧迫
同社を苦しめた大きな要因が、原価の高騰です。
発泡スチロール製品の製造では、原材料、電力、燃料、物流、包装資材、設備維持費などが原価に影響します。
特に発泡スチロールの原料は石油化学系素材と関係が深く、原油価格や化学品価格の変動の影響を受けやすいと考えられます。
また、製造工程では電力も必要です。
近年の電気料金上昇は、製造業にとって大きな負担です。
さらに、軽量でかさばる発泡スチロール製品は、物流効率の面でも課題があります。
重量は軽くても体積が大きいため、輸送コストがかかりやすいのです。
原材料費、電力費、物流費が同時に上がれば、製品1個あたりの原価は上昇します。
通常であれば、その分を販売価格に反映する必要があります。
しかし、それが十分にできなかったことが同社の収益を圧迫しました。
2-4. 発注メーカーからの強い要請による価格転嫁の難しさ
記事では、元来発注メーカーからの強い要請もあり、価格転嫁は思うようにいかなかったとされています。
ここに、下請け製造業の根深い問題があります。
発注元メーカーは、自社の製品原価を抑えるため、部品や梱包材の仕入価格を厳しく管理します。
特に梱包材や緩衝材は、最終製品そのものの機能ではなく、輸送や保管のための資材です。
そのため、発注元から見ると「できるだけ安く調達したい資材」と見られやすい傾向があります。
発泡スチロール製品メーカー側が、原材料費や電力費の上昇を理由に値上げを求めても、発注元から受け入れられなければ価格転嫁は進みません。
また、同業他社が価格を据え置けば、値上げした企業は受注を失う可能性があります。
つまり、発注元との力関係と競合状況のなかで、値上げをしたくてもできない状態に陥りやすいのです。
価格転嫁できないまま原価が上がれば、粗利益は減ります。
粗利益が減ると、固定費を吸収できなくなります。
固定費を吸収できなければ、営業赤字になります。
これが続くと、赤字体質が常態化します。
2-5. 債務超過と資金繰りの切迫
同社は債務超過状態となり、資金繰りも切迫していたとされています。
債務超過とは、会社の資産よりも負債が多い状態です。
これは、過去の赤字が蓄積し、自己資本を食いつぶしていることを意味します。
債務超過になると、金融機関からの追加支援を受けにくくなります。
取引先の信用も低下します。
新たな設備投資や人材採用も難しくなります。
資金繰りが切迫すると、経営者は日々の支払いに追われるようになります。
材料費の支払い、給与、社会保険料、税金、借入返済、電気料金、外注費など、製造業には多くの支払いがあります。
支払いを続けるためには、売上入金が必要です。
しかし、赤字受注が続いている場合、売上が入っても利益が残らず、資金繰りは改善しません。
この状態になると、事業を続けるほど資金が減っていく可能性があります。
3. 経営上の問題点
3-1. 主要顧客の生産動向に左右される受注構造
同社は、家電品メーカー、電気機器メーカー、自動車部品メーカーなどを主要顧客としていました。
これは、安定した取引がある間は強みです。
工場が近くにあり、継続的な梱包材需要があれば、営業効率も高くなります。
しかし、その一方で、顧客メーカーの生産動向に強く左右される構造でもあります。
顧客メーカーの生産量が減る。
製品モデルが変わる。
梱包仕様が変更される。
海外生産へ移る。
他素材へ切り替わる。
物流方法が変わる。
こうした変化が起きると、受注は減少します。
特定の業界や地域工場に依存している場合、外部ショックへの耐性は弱くなります。
同社も、近隣工場の需要があることを強みに成長した一方、その地域需要に依存していた可能性があります。
3-2. 価格決定権の弱さ
下請け型・受注型の製造業では、価格決定権が弱くなりがちです。
発注元メーカーが価格を厳しく管理している場合、受注側は値上げ交渉をしにくくなります。
特に梱包材のように、顧客から見て差別化が見えにくい製品では、価格競争になりやすい傾向があります。
発泡スチロール製品は、形状や品質、納期対応では差別化できます。
しかし、発注元が「同じ仕様なら安い方がよい」と判断すれば、価格競争に巻き込まれます。
原価が上がっても価格に反映できない企業は、利益を確保できません。
つまり、価格決定権の弱さは、収益性の弱さに直結します。
3-3. 製品の付加価値訴求が難しかった可能性
梱包用の緩衝材や断熱材は、製品を守るために必要なものです。
しかし、最終消費者の目に触れる機会は少なく、発注元にとってはコスト項目として見られやすい製品です。
そのため、単に「発泡スチロール製品を作る」だけでは、価格以外の価値を訴求しにくい場合があります。
本来であれば、次のような付加価値を提案する余地があります。
・梱包設計による破損率低下
・軽量化による物流費削減
・断熱性能の向上
・作業効率の改善
・梱包工程の省力化
・リサイクル対応
・環境対応素材への提案
・小ロット短納期対応
・顧客製品に合わせた設計提案
これらを提案できれば、単なる資材納入業者ではなく、物流品質や工程改善を支援するパートナーとして位置づけられます。
しかし、そうした提案型の営業へ十分に転換できなかった場合、価格競争から抜け出しにくくなります。
3-4. 設備・工場を抱える固定費構造
製造業は、設備や工場を持つことで安定供給が可能になります。
しかし、売上が減少すると、設備や工場は固定費負担になります。
同社は従業員5名の小規模企業ですが、メーカーである以上、一定の製造設備、工場スペース、電力、メンテナンス費用が必要だったと考えられます。
受注量が十分にある場合、これらの固定費は製品単価に吸収できます。
しかし、受注が減ると、1個あたりの固定費負担が上がります。
さらに、設備の老朽化があれば修繕費もかかります。
売上が減り、原価が上がり、設備維持費も必要となれば、利益を出すことは難しくなります。
3-5. 赤字体質の常態化
記事では、赤字体質が常態化していたとされています。
これは非常に重い表現です。
一時的な赤字であれば、改善余地はあります。
しかし、赤字体質が常態化していたということは、事業構造そのものが利益を出しにくくなっていたということです。
売上が足りない。
価格が低い。
原価が高い。
固定費が重い。
受注先に価格転嫁できない。
このような状態が続けば、経営努力だけで黒字化することは難しくなります。
赤字体質の常態化は、経営者にとって最も警戒すべき状態です。
なぜなら、毎月少しずつ会社の体力を削っていくからです。
4. 経営視点からの考察
今回の事業停止は、外部ショックの連続と価格転嫁不足によって、中小製造業の収益構造が崩れた事例といえます。
サンテークは、長年にわたり地域の製造業を支える梱包材メーカーとして事業を続けてきました。
近隣に需要のある工場が多数あったことは、明確な強みでした。
顧客工場に近いことは、納期対応、物流費、細かな仕様変更への対応において有利です。
しかし、その強みは同時に、近隣工場の景気や生産量に依存するリスクでもありました。
顧客メーカーの受注が減れば、梱包材需要も減ります。
顧客メーカーが海外生産へ移れば、国内での需要は減ります。
発注元がコスト削減を求めれば、価格転嫁は難しくなります。
中小製造業にとって、長年の取引先があることは強みですが、それだけでは十分ではありません。
重要なのは、取引先から「安いから使う」ではなく、「この会社でなければ困る」と思われる価値を作ることです。
たとえば、梱包設計、試作対応、小ロット対応、短納期、破損防止、物流コスト削減、環境対応などです。
単なる発泡スチロール製品の供給ではなく、顧客の物流・品質・コスト課題を解決する提案ができれば、価格交渉力は多少なりとも高まります。
一方で、発注元からの強い要請で価格転嫁が難しい状態が続いていたということは、同社の交渉余地はかなり限られていたと考えられます。
この場合、経営の分岐点は、原価高騰が明確になった段階です。
その時点で、値上げ交渉だけでなく、低採算取引の見直し、製品別採算の分析、顧客別利益率の確認、新規用途の開拓、固定費削減を同時に進める必要がありました。
5. こうすれば良かった可能性がある経営施策
5-1. 顧客別・製品別の採算を早期に見直すべきだった
まず必要だったのは、顧客別・製品別の採算管理です。
製造業では、売上金額だけでは本当の収益性は分かりません。
顧客ごと、製品ごとに、次の項目を確認する必要があります。
・販売単価
・原材料費
・加工時間
・電力費
・人件費
・段取り替え時間
・不良率
・納品頻度
・物流費
・支払条件
・値上げ交渉の余地
一見大口の取引先であっても、単価が低く、短納期で、納品回数が多く、仕様変更が多い場合、実際には利益が残っていないことがあります。
赤字製品や低採算顧客を特定し、価格改定、仕様変更、取引条件の見直しを行う必要がありました。
5-2. 価格転嫁を「お願い」ではなく「根拠ある交渉」にすべきだった
価格転嫁が難しい場合でも、単に「原価が上がったので値上げしてください」と言うだけでは、発注元は受け入れにくいものです。
必要なのは、数値根拠を示した交渉です。
・原材料価格の推移
・電気料金の上昇
・物流費の上昇
・製品別原価の変化
・現行価格での赤字幅
・価格改定後の必要最低単価
・仕様変更によるコスト削減案
・納品頻度変更による物流費削減案
また、値上げだけでなく、仕様や取引条件の変更も交渉材料になります。
たとえば、次のような提案です。
・納品回数を減らす
・ロット数を増やす
・形状を簡素化する
・共通部品化する
・納期を標準化する
・在庫負担を顧客側と分担する
・材料変更を検討する
発注元にとっても、仕入先が倒れれば困る場合があります。
そのため、単なる値上げ要求ではなく、安定供給を維持するための共同改善として提案すべきでした。
5-3. 低採算受注を断る判断が必要だった
中小製造業にとって、長年の取引先からの受注を断ることは簡単ではありません。
しかし、赤字受注を続ければ、会社全体が弱ります。
受注すれば売上は立ちます。
しかし、利益が出なければ、製造すればするほど資金が減ります。
特に、原材料費や電力費が上がるなかで価格転嫁できない取引は、会社にとって危険です。
必要だったのは、最低粗利益率を下回る取引について、受注継続の可否を判断することです。
・値上げ交渉できる取引は継続
・仕様変更で利益改善できる取引は継続
・物流条件を変えられる取引は継続
・改善余地がない赤字取引は縮小または撤退
売上を減らすことは怖い判断です。
しかし、赤字売上を抱え続けることは、より危険です。
5-4. 発泡スチロール以外の用途・市場を開拓すべきだった
同社は、家電、電気機器、自動車部品向けの梱包材・緩衝材を主力としていました。
これらは工業製品向け需要ですが、発泡スチロールには他にも用途があります。
たとえば、次のような市場です。
・食品保冷容器
・水産物・農産物の輸送箱
・医薬品・検体輸送用保冷材
・建築用断熱材
・イベント用造形材
・模型・展示用素材
・防災用品
・小ロット梱包材
・EC向け特殊梱包材
もちろん、用途を広げるには、営業、品質基準、加工技術、販路開拓が必要です。
しかし、特定の製造業向けに依存していた場合、外部ショックの影響を大きく受けます。
リスク分散のためには、異なる業界への販路開拓が必要でした。
5-5. 環境対応・代替素材への対応を検討すべきだった
発泡スチロールは便利な素材ですが、環境負荷や廃棄の観点から見直しの対象になることもあります。
近年、包装材にはリサイクル性、環境配慮、脱プラスチック、廃棄削減といった視点が求められています。
そのため、発泡スチロール製品メーカーとしては、単に従来品を作るだけでなく、次のような提案が必要でした。
・リサイクル対応品
・軽量化設計
・再利用可能な梱包材
・紙素材や段ボールとの組み合わせ
・発泡素材の使用量削減設計
・廃棄コスト削減提案
・顧客の環境方針に合う梱包提案
環境対応はコストになる面もありますが、差別化要素にもなります。
単価を上げにくい製品ほど、顧客の環境対応や物流改善に貢献する提案が重要になります。
5-6. 固定費と設備体制を売上規模に合わせて縮小すべきだった
ピーク時の売上約2億4500万円に対し、2024年12月期は約1億3900万円です。
売上規模が大きく縮小したにもかかわらず、工場や設備、人員体制が過去の売上規模を前提としたままであれば、固定費負担は重くなります。
必要だったのは、売上1億4000万円規模でも黒字化できる体制への再設計です。
・工場スペースの縮小
・不要設備の売却
・設備メンテナンス費の見直し
・外注活用
・製造品目の絞り込み
・高採算品への集中
・電力契約の見直し
・在庫圧縮
・受注生産比率の向上
製造業では、設備を減らす判断は難しいものです。
設備を減らせば、将来の受注機会を失う可能性もあります。
しかし、使われていない設備や過大な固定費を抱え続けることは、資金繰りを圧迫します。
5-7. 債務超過が深刻化する前に事業譲渡・スポンサー探索を検討すべきだった
同社は長年の業歴があり、発泡スチロール製品の製造設備、技術、顧客基盤、地域取引先を持っていたと考えられます。
業況が悪化しても、これらには一定の事業価値が残っていた可能性があります。
債務超過が深刻化し、資金繰りが切迫する前であれば、同業者や周辺業種への事業譲渡、スポンサー支援を検討できたかもしれません。
考えられる譲渡先は次のような企業です。
・発泡スチロール製品メーカー
・梱包資材メーカー
・物流資材会社
・段ボールメーカー
・断熱材メーカー
・食品保冷容器メーカー
・地元製造業グループ
事業譲渡によって、従業員、設備、取引先の一部を残せた可能性があります。
破産直前では、交渉力が低下し、事業価値も失われやすくなります。
早期判断が重要でした。
6. 同業・中小企業への示唆
6-1. 長年の取引先があることは安心材料ではない
継続取引は強みですが、取引先の生産量や価格方針に左右されるなら、経営リスクでもあります。
顧客別売上比率と利益率を定期的に確認する必要があります。
6-2. 価格転嫁できない取引は、会社を静かに傷める
原価が上がっても価格を上げられない取引は、売上があっても利益を失わせます。
赤字受注は、一見すると仕事を守っているように見えますが、実際には会社の体力を削ります。
6-3. 製造業は固定費を売上規模に合わせる必要がある
設備、工場、人員は製造業の強みですが、受注が減れば固定費負担になります。
売上が大きく減少した場合は、過去の規模を前提にした設備体制を見直す必要があります。
6-4. 下請け製造業ほど提案力が重要になる
単に指示されたものを作るだけでは、価格競争に巻き込まれます。
梱包設計、物流改善、破損防止、環境対応、短納期対応など、顧客の課題を解決する提案力が必要です。
7. 今回の教訓
価格転嫁できない受注を続ければ、売上があっても会社は削られていく
今回の教訓は、製造業において売上があることと、利益が残ることはまったく別であるという点です。サンテークは、1976年創業の発泡スチロール製品メーカーとして、長年にわたり家電品メーカー、電気機器メーカー、自動車部品メーカー向けに梱包用緩衝材や断熱材を製造してきました。
近隣に需要のある工場が多数あったことは、同社にとって大きな強みでした。2005年12月期には年売上高約2億4500万円を計上しており、地域製造業を支える存在だったと考えられます。しかし、リーマン・ショック、東日本大震災、コロナ禍といった外部ショックによって受注は安定せず、2024年12月期の年売上高は約1億3900万円まで減少しました。さらに、原価高騰に対して価格転嫁が進まず、赤字体質が常態化しました。発注メーカーからの強い要請があったことから、価格交渉は容易ではなかったと考えられます。しかし、価格転嫁できないまま製造を続ければ、売上はあっても利益は残りません。
むしろ、作れば作るほど資金が減る取引になってしまう可能性があります。同社の事例で重要なのは、外部環境が悪かったということだけではありません。受注が減少したときに、売上規模に合わせた固定費の見直しができていたか。原価上昇を数値で示し、根拠ある価格交渉ができていたか。
顧客別・製品別の採算を把握できていたか。赤字取引を継続するかどうかの判断基準があったか。既存顧客以外の販路や用途を開拓できていたか。梱包材メーカーとして、単なる資材供給ではなく、物流改善や環境対応の提案ができていたか。こうした点を見直す必要がありました。もちろん、下請け製造業にとって価格転嫁は簡単ではありません。長年の取引先との関係を考えれば、値上げを強く求めることには不安があります。値上げをすれば、他社へ発注が移る可能性もあります。
しかし、赤字価格で受注を続ければ、最終的に会社そのものが維持できなくなります。
取引を守ることと、会社を守ることは同じではありません。時には、採算の合わない取引から撤退する判断も必要です。
また、製造業は設備や工場を持つ以上、受注減少に対して固定費が重くのしかかります。
ピーク時の売上規模を前提にした設備体制を、売上が4割以上減少した後も維持すれば、利益を出すことは難しくなります。
事業環境が変わったときには、製品構成、顧客構成、設備体制、固定費、資金繰りを同時に見直す必要があります。
サンテークの事例は、中小製造業に対して、次の問いを投げかけています。
その取引は、本当に利益が出ているのか。
原価上昇分を価格に反映できているのか。
大口顧客ほど赤字になっていないか。
設備や工場は、現在の売上規模に合っているのか。
売上を守るために、利益を犠牲にしていないか。
価格競争から抜け出す提案力を持っているか。
債務超過になる前に、提携や事業譲渡を検討できているか。
製造業にとって、受注は生命線です。
しかし、利益を生まない受注は、企業を守るどころか、静かに体力を奪っていきます。
今回の事例は、長年続いた製造業であっても、価格転嫁できない構造と赤字体質を放置すれば、事業継続が困難になることを示しています。
中小製造業が生き残るためには、単に作る力だけではなく、価格を説明する力、採算を見極める力、取引条件を変える力、そして必要なときに赤字受注を断る力が必要です。
それが、サンテークの事例から学ぶべき最大の教訓ではないでしょうか。
ちなみに旭化成工業株式会社の緩衝梱包材、サンテックフォームとは関係ないよね??
そして代表者が丸山佳子とあるが、旦那さんから引き継いだのだろうか
