創業108年の金沢老舗和菓子店「高砂屋」が破産 新幹線・ECでも救えなかった原価高の重圧

「加賀の巻絹」で知られた老舗 売上チャネルを広げても利益を残せなかった理由

「石川」 (株)高砂屋(資本金1000万円、金沢市石引2-7-4、代表吉田二朗氏)は、9月11日に金沢地裁より破産手続き開始決定を受けた。

破産管財人には、長原悟弁護士(長原法律事務所、金沢市駅西新町3-1-10、電話076-282-9292)が選任されている。

当社は、1918年(大正7年)創業、51年(昭和26年)11月に法人改組された和菓子の製造販売業者。「兼六園本舗 高砂屋」の店舗名で、看板商品の「加賀の巻絹」のほか、販売する商品は昔ながらの手作業で製造し、本店のほか、金沢駅に隣接する商業施設にも出店。北陸新幹線金沢開業やECサイトでの和菓子販売などによって、県内にとどまらず県外の顧客も獲得するなど、精力的な営業活動を続けてきた。

しかし、近年の相次ぐ物価高の影響は大きく、利益の確保は難航。先行きの見通し難から2026年7月30日付で本店、商業施設の店舗ともに事業を停止していた。

負債は約9000万円。

帝国DBより

1. 経営悪化の背景

売上不足よりも「粗利益不足」が本質だった可能性

今回の高砂屋の破産で最も重要なのは、「商品が売れなかったから倒産した」と単純には言えない点です。

高砂屋は1918年創業の老舗で、看板商品「加賀の巻絹」を中心に、金沢本店だけでなく金沢駅周辺の商業施設にも店舗を展開していました。

さらに北陸新幹線の金沢開業による観光需要を取り込み、ECサイトを通じて県外顧客の開拓も行っています。

つまり、販売チャネルを増やす努力は相当に行っていた会社です。

それでも破産に至ったということは、今回の問題を考えるうえでは売上高よりも、

「売った後にどれだけ利益が残っていたのか」

を見る必要があります。

2. 和菓子業界を直撃した原材料価格の上昇

砂糖・小豆・小麦・卵・包装資材まで幅広く上昇

和菓子は比較的シンプルな原材料で作られているように見えますが、近年は多くの原材料価格が上昇しています。

  • 砂糖
  • 小豆
  • 小麦粉
  • 米粉
  • 乳製品
  • 食用油
  • 包装資材
  • 段ボール
  • 配送費

これらが同時に上昇すると、商品1個あたりの製造原価が大きく上がります。

特に高砂屋は「昔ながらの手作業」による製造を特徴としていました。

これは商品価値やブランド力につながる一方で、機械化された大量生産と比べて人件費率が高くなりやすいという経営上の特徴があります。

原材料高、人件費上昇、包装資材高、物流費上昇が同時に進めば、利益率は急速に低下します。

3. 価格転嫁できなければ売るほど利益が減る

100円の原価上昇は、そのまま利益を100円削る

原材料価格が上昇した場合、企業が取れる方法は基本的には値上げです。

例えば1000円の商品について、従来の原価が500円だったとします。

この場合、粗利益は500円です。

ところが原材料や人件費の上昇によって原価が650円になれば、販売価格を変えない限り粗利益は350円まで減少します。

売上高そのものは同じでも、粗利益は30%減少することになります。

さらに店舗家賃や光熱費などが上昇すれば、営業利益はより大きく圧迫されます。

老舗和菓子店では、長年利用している顧客への配慮から急激な値上げを避けるケースもあります。

しかし、原価が10%上昇しているのに販売価格を3%しか上げられなければ、その差額は企業側が負担することになります。

4. 「手作り」という強みがコスト面では弱点にもなる

高付加価値化できなければ人件費を吸収できない

高砂屋の商品は、昔ながらの手作業で製造されていたとされています。

手作りは老舗菓子店にとって重要なブランド価値です。

一方、経営の視点から見ると、

  • 製造できる数量に限界がある
  • 熟練した職人が必要
  • 人件費率が高くなる
  • 急な増産が難しい

という課題があります。

例えば機械製造なら1人で1時間に1000個作れる商品を、手作業では100個しか作れない場合、同じ商品価格では当然ながら人件費負担が大きくなります。

手作りを維持するのであれば、その分を価格へ反映し、

「安い和菓子」ではなく「高付加価値な伝統菓子」として販売する

必要があります。

5. 金沢駅への出店は売上と同時に固定費も増やす

観光需要が強くても、店舗採算は別問題

高砂屋は本店のほか、金沢駅に隣接する商業施設にも出店していました。

北陸新幹線の金沢開業によって観光客が増えたことは、金沢の和菓子店にとって大きな追い風だったと思われます。

しかし、駅周辺の商業施設は一般的に集客力が高い反面、

  • 店舗賃料
  • 共益費
  • 販売手数料
  • 人件費
  • 営業時間に合わせたシフト

などの固定費・販売経費も発生します。

重要なのは売上高ではなく、

「その店舗を出したことで最終的にいくら利益が増えたか」

です。

例えば駅店舗で年間5000万円を売り上げても、商品原価・人件費・家賃・販売手数料などで4800万円かかれば、利益は200万円しかありません。

設備投資や運転資金まで考えれば、必ずしも効率の良い店舗とは言えません。

6. EC販売も万能ではない

ネット通販は新しいコストを生む

高砂屋はECサイトによる県外販売にも取り組んでいました。

ECは商圏を全国へ広げられるため非常に有効な販売手段です。

しかし、EC販売には実店舗とは異なるコストがあります。

  • ECサイト運営費
  • 決済手数料
  • 梱包資材
  • 送料
  • 広告費
  • 受注管理
  • 発送作業の人件費

特に和菓子は単価が数百円から数千円程度の商品が多く、送料負担が利益率を圧迫します。

例えば3000円の商品を販売しても、送料800円、決済手数料、梱包費などが加われば、実店舗販売より利益率が低くなることもあります。

ECを始めること自体ではなく、

「EC経由の1注文あたり利益はいくらなのか」

を管理することが重要です。

7. 売上を増やす努力と利益を増やす努力は違う

今回の事例から見える重要な経営課題

高砂屋は北陸新幹線需要の取り込み、駅周辺への出店、EC販売など、売上を増やす施策を行っていました。

この点だけを見ると、非常に前向きに事業展開していた企業だと思われます。

しかし、

売上を増やすことと利益を増やすことは必ずしも同じではありません。

売上が1億円増えても、そのために原価や固定費が1億1000万円増えれば会社は赤字になります。

事業拡大期ほど経営者は売上高を追いかけがちですが、実際に見るべき数字は、

  • 商品別粗利益
  • 店舗別営業利益
  • 販売チャネル別利益
  • 1人あたり粗利益
  • 営業キャッシュフロー

です。

8. 負債9000万円は老舗和菓子店にとって重かったか

問題は負債額より「年間いくら返せるか」

今回の負債総額は約9000万円とされています。

企業倒産の記事を見ると9000万円という金額そのものに目が行きますが、重要なのは負債額ではありません。

重要なのは、

「本業から年間いくら返済原資を生み出せていたか」

です。

例えば年間3000万円の営業キャッシュフローを生み出す会社であれば、9000万円の借入は3年分です。

一方、年間300万円しか返済余力がない会社であれば、9000万円は30年分の返済原資に相当します。

原材料高によって利益が圧迫されていたのであれば、借入金の返済原資も同時に減っていたと考えられます。

9. 銀行から見れば追加融資が難しくなる局面

原材料高を借入で埋め続けることはできない

今回のようなケースを銀行側から見ると、重要なのは原材料価格

投稿者 kato

これはテスト画像ですよ。テストです。

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