測量設計業者の破産に見る、官公庁受注依存と収益性不安定の難しさ
― 共進測量設計の事例から考える、公共測量・民間受注拡大・保証協会代位弁済・資金繰りの課題 ―
「茨城」 共進測量設計(株)(資本金1000万円、土浦市湖北2-2-16、代表飯田哲夫氏)は、8月6日に水戸地裁土浦支部より破産手続き開始決定を受けた。
破産管財人には、小菅稔弁護士(小菅綜合法律事務所、土浦市港町1-7-3、電話029-835-7810)が選任されている。財産状況報告集会期日は11月12日午後1時40分。
当社は、1978年(昭和53年)7月に設立された測量業者。官公庁から用地・境界の測量業務を受注し、2021年6月期には年収入高約6900万円を計上していた。
しかし、散発的に欠損を計上するなど収益性は安定せず、民間からの受注拡大にも取り組んでいたものの、2025年6月期の年収入高は約5600万円に後退。茨城県信用保証協会による一部代位弁済が行われるなど、資金繰りに窮する状態に陥っていた。
負債は約1億2000万円。
帝国DBより
1. 経営悪化の背景
1-1. 官公庁向けの用地・境界測量を手がけた老舗業者
同社は、1978年7月に設立された測量業者とされています。
官公庁から用地・境界の測量業務を受注していたとの情報があります。
用地測量や境界測量は、公共工事、道路整備、河川、上下水道、公共施設整備、土地管理などに関わる重要な業務です。
測量業務には、現地調査、境界確認、図面作成、関係者調整、成果品作成など、専門性と経験が求められます。
官公庁案件を長年受注していたという点から、一定の実績や地域での信用を持っていた会社だったと考えられます。
一方で、官公庁受注は、予算、入札、発注時期、競争環境に左右されます。
安定した取引先に見える反面、受注単価や受注量を自社で自由に決めにくく、収益性が不安定になりやすい面もあります。
1-2. 年収入高約6900万円から約5600万円への後退
同社は、2021年6月期に年収入高約6900万円を計上していたとされています。
しかし、2025年6月期の年収入高は約5600万円に後退していたとの情報があります。
金額としては約1300万円の減少ですが、年収入高が数千万円規模の会社にとっては大きな影響があります。
測量業では、人件費、測量機器、車両、事務所費、保険、外注費、CAD・測量ソフト、資格者維持などの固定費が発生します。
売上が減少しても、技術者や設備をすぐに縮小することは簡単ではありません。
そのため、受注額の減少は、利益率と資金繰りに直接影響しやすくなります。
同社の場合、売上後退に対して固定費や借入返済を吸収するだけの利益を確保できなかった可能性があります。
1-3. 散発的な欠損計上による収益性の不安定さ
同社は、散発的に欠損を計上するなど、収益性が安定していなかったとされています。
測量業は、受注ごとの人件費と作業工数が利益を大きく左右します。
現場条件が難しい案件、境界立会いに時間がかかる案件、修正対応が多い案件、入札価格が低い案件では、想定以上に工数が膨らみます。
受注金額が一定でも、現場作業や図面作成にかかる時間が増えれば、利益は減少します。
特に官公庁案件では、仕様や成果品の要求が明確である一方、価格競争や入札によって利益率が低くなりやすいことがあります。
欠損が散発的に発生していたという点から、案件ごとの採算管理や工数管理に課題があった可能性があります。
1-4. 民間受注拡大の難しさ
同社は、民間からの受注拡大にも取り組んでいたとされています。
これは、官公庁受注への依存を下げ、売上基盤を広げようとした動きだったと考えられます。
民間向け測量には、不動産会社、建設会社、土地所有者、開発業者、ハウスメーカー、士業事務所などからの需要があります。
しかし、民間受注は価格競争、納期対応、営業力、紹介ネットワーク、スピード感が求められます。
官公庁案件を中心にしてきた会社が民間案件を拡大するには、営業方法や商品設計を変える必要があります。
単に「民間も対応できます」というだけでは、案件化しにくい面があります。
同社の場合、民間受注の拡大に取り組んだものの、売上減少を補うほどの成果には至らなかった可能性があります。
1-5. 信用保証協会による一部代位弁済
同社は、茨城県信用保証協会による一部代位弁済が行われるなど、資金繰りに窮する状態に陥っていたとされています。
代位弁済は、金融機関への返済が難しくなった場合に、信用保証協会が金融機関へ弁済するものです。
これにより金融機関への返済は一部整理される形になりますが、事業者の返済義務がなくなるわけではありません。
その後は、保証協会への返済が残るため、財務負担は継続します。
銀行や経営コンサルの視点では、代位弁済が行われた段階で、通常の金融支援による再建はかなり難しい局面に入っていたと見ます。
この段階では、追加借入による維持よりも、受注構造、固定費、返済原資を抜本的に見直す必要があったと思われます。
1-6. 負債約1億2000万円の重さ
同社の負債は約1億2000万円とされています。
2025年6月期の年収入高約5600万円と比較すると、負債額は年収入高の2倍を超える水準です。
測量業は、製造業のような大型在庫を抱える業態ではありませんが、人件費、設備、外注費、借入返済などが継続的に発生します。
年収入高が減少し、欠損も散発的に発生していた状態では、通常営業から返済原資を作ることは難しくなっていた可能性があります。
銀行や経営コンサルの視点では、売上規模に対する負債の重さと、月次で返済可能なキャッシュフローがどれだけ残るかを重視します。
負債額が年収入高を大きく上回っている状況では、受注回復だけで再建するには厳しかったのではないでしょうか。
2. 経営上の問題点
2-1. 官公庁受注への依存
同社は、官公庁から用地・境界の測量業務を受注していたとされています。
官公庁案件は、一定の信用力や実績が必要であり、受注できれば安定性があるように見えます。
しかし、発注量や予算は行政側の計画に左右されます。
また、入札や競争見積により、価格が下がりやすい場合もあります。
官公庁案件に依存していると、受注が減った場合や単価が下がった場合に、売上と利益への影響が大きくなります。
同社にとっては、官公庁案件を基盤としながらも、民間や維持管理関連の継続業務を増やす必要があったと思われます。
2-2. 案件別採算と工数管理の難しさ
測量業では、案件別の工数管理が重要になります。
現地作業、境界立会い、役所調査、図面作成、成果品修正、顧客対応などにかかる時間が増えると、利益率は下がります。
見積時には採算が合うように見えても、実際の現場条件によって工数が増えることがあります。
特に境界測量では、隣地所有者との調整、資料不足、過去図面との不整合などにより、想定以上に時間がかかる場合があります。
散発的に欠損を計上していたとされる点から、案件ごとの工数増加や低採算受注が利益を圧迫していた可能性があります。
2-3. 民間受注拡大に必要な営業力
民間からの受注拡大にも取り組んでいたとされていますが、年収入高は後退していました。
民間案件を増やすには、官公庁案件とは異なる営業力が必要です。
不動産会社、建設会社、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、設計事務所、ハウスメーカーなどとの紹介ネットワークが重要になります。
また、民間顧客はスピード、分かりやすい料金、相談対応、納期、追加費用の明確さを重視します。
官公庁向けの実績があっても、民間向けの営業導線を作れなければ、受注拡大は難しくなります。
同社の場合、民間受注への転換が十分に進まなかった可能性があります。
2-4. 借入負担と返済原資の不足
負債は約1億2000万円とされています。
年収入高約5600万円に対して、この負債規模はかなり重い水準だったと考えられます。
測量業は、人件費が中心の事業であり、利益率を確保できれば安定しやすい面があります。
しかし、受注減少や低採算案件が続くと、営業キャッシュフローは不足します。
銀行から見ると、追加借入を判断する際には、今後の案件受注と利益から返済原資が生まれるかが重要になります。
代位弁済が行われていたとされる状況では、通常の借入による維持は相当難しかった可能性があります。
2-5. 代位弁済後の再建余地
信用保証協会による一部代位弁済が行われていたとされています。
代位弁済後は、金融機関からの通常融資を受けにくくなることが多く、資金繰りの選択肢は狭くなります。
この段階では、新たな資金調達よりも、既存事業でどれだけ現金を残せるかが重要になります。
しかし、年収入高が後退し、収益性も安定していなかった場合、保証協会への返済や既存債務を支えるだけの資金を確保することは難しくなります。
銀行や経営コンサルの視点では、代位弁済が起きる前に、事業縮小、低採算案件の整理、民間受注の再設計、事業譲渡を検討する必要があったと思われます。
3. 経営視点からの考察
今回の事例は、長年にわたり官公庁向け測量を手がけてきた会社であっても、受注減少と収益性の不安定さ、借入負担が重なると、資金繰りを支えきれなくなる可能性を示していると考えます。
共進測量設計は、1978年設立の測量業者で、官公庁から用地・境界の測量業務を受注していたとされています。
測量は公共事業や土地利用に欠かせない専門業務であり、長年の経験と地域での信用があった可能性があります。
2021年6月期には年収入高約6900万円を計上していたとされていますが、2025年6月期には約5600万円に後退していました。
また、散発的に欠損を計上するなど収益性は安定せず、茨城県信用保証協会による一部代位弁済が行われるなど、資金繰りに窮していたとの情報があります。
銀行や経営コンサルの視点では、この事例で重要なのは、売上規模よりも、案件別に利益と現金が残っていたかどうかです。
測量業は、工場や在庫を大きく抱える業態ではない一方、人件費と技術者の稼働率が収益を左右します。
受注単価が低く、現場工数や修正対応が増えれば、売上があっても利益は残りません。
また、官公庁案件は信用力のある受注先ですが、入札競争や発注時期に左右されやすく、受注量を自社でコントロールしにくい面があります。
民間受注の拡大に取り組んでいたものの、売上減少を補うほどには至らなかった可能性があります。
負債約1億2000万円は、2025年6月期の年収入高約5600万円に対して重く、通常営業から返済原資を作るにはかなり厳しい水準だったと思われます。
今回の事例は、公共案件の実績がある専門業者であっても、案件別採算と返済原資を管理できなければ、長期的な事業継続は難しくなることを示しているのではないでしょうか。
4. こうすれば良かった可能性がある経営施策
4-1. 案件別の採算と工数を徹底管理する
測量業では、案件ごとの採算管理が非常に重要です。
同じ測量業務でも、現場条件や関係者調整の難易度によって、必要な工数は大きく変わります。
受注段階で、作業時間、人員、現地調査回数、図面修正、役所調査、境界立会いの有無を見積もる必要があります。
- 案件別売上
- 現地作業時間
- 図面作成時間
- 境界立会い回数
- 修正対応工数
- 外注費
- 入金サイト
- 案件別粗利益
低採算案件を続けると、売上があっても利益は残りません。
まずは、利益を生む案件と工数ばかりかかる案件を切り分ける必要があったのではないでしょうか。
4-2. 官公庁案件だけでなく民間向け商品を明確化する
同社は、民間からの受注拡大にも取り組んでいたとされています。
しかし、民間向けの受注を増やすには、測量サービスを分かりやすい商品として見せる必要があります。
たとえば、土地売買前の境界確認、相続前の土地調査、建築前の測量、開発予定地の現況測量など、民間顧客の用途ごとにサービスを整理する方法が考えられます。
- 不動産売買前の測量パッケージ
- 相続・分筆相談向け測量
- 建築前の敷地調査
- ハウスメーカー向け現況測量
- 不動産会社向け短納期測量
- 士業向け境界確認支援
官公庁向けの実績を民間向けの安心材料として伝え、紹介ネットワークを作る必要があったと思われます。
4-3. 士業・不動産・建設会社との紹介導線を作る
民間測量を増やすには、継続的な紹介導線が重要になります。
土地家屋調査士、司法書士、行政書士、不動産会社、建設会社、設計事務所、ハウスメーカーなどとの連携を強化する必要があったと考えます。
測量は、土地売買、相続、建築、開発、境界トラブルなどの場面で必要になります。
そのため、顧客が測量を必要とする前段階にいる専門家とつながることが重要です。
単発の営業ではなく、紹介が継続的に発生する関係づくりが必要だったのではないでしょうか。
4-4. 受注単価の下限を設定する
収益性が安定していなかったとされるため、受注単価の下限設定が必要だったと考えます。
測量業では、受注金額だけでなく、現場の難易度や調整工数を含めて採算を判断する必要があります。
低価格で受注しても、境界立会いや修正対応が増えれば赤字になる可能性があります。
そのため、最低粗利益率や最低受注単価を設定し、採算が見込めない案件は受けない判断も必要です。
売上減少局面では、少しでも受注したくなります。
しかし、赤字案件を受ければ、資金繰りはさらに悪化します。
銀行や経営コンサルの視点では、売上確保よりも、返済原資を生む案件に絞ることが重要だったと思われます。
4-5. 固定費と人員体制を売上規模に合わせる
2025年6月期の年収入高は約5600万円に後退していたとされています。
売上が後退している場合、固定費と人員体制を現在の売上規模に合わせて見直す必要があります。
測量業では、技術者の確保が重要ですが、稼働率が低い状態で人員を維持すると、人件費負担が重くなります。
また、測量機器、車両、事務所、ソフトウェア費用なども固定費になります。
売上が戻る前提で体制を維持するのではなく、現在の受注量でも黒字化できる体制へ縮小する判断が必要だったのではないでしょうか。
4-6. 代位弁済前に金融機関と再建計画を共有する
茨城県信用保証協会による一部代位弁済が行われていたとされています。
代位弁済が発生すると、通常の金融支援は難しくなり、再建の選択肢は狭くなります。
そのため、代位弁済に至る前に、金融機関と再建計画を共有する必要があったと考えます。
- 案件別採算の改善
- 低採算受注の停止
- 民間受注の具体的な獲得計画
- 固定費削減
- 人員体制の見直し
- 月次資金繰り表
- 返済可能額
銀行から見ると、重要なのは「受注を増やします」という説明ではなく、どの案件で利益を出し、どの現金から返済するのかです。
返済原資が見えない状態では、追加借入による維持は難しくなってしまいます。
4-7. 事業譲渡や技術者承継を早期に検討する
測量業では、技術者、資格、地域の実績、官公庁との取引経験、測量データ、顧客基盤に価値があります。
会社全体として債務を支えきれない場合でも、技術者や顧客、案件履歴を同業者へ引き継ぐ選択肢があった可能性があります。
資金繰りが限界に近づく前に、同業測量会社、建設コンサルタント、設計事務所、土地家屋調査士事務所などへの事業譲渡や人材承継を検討する余地があったと思われます。
長年の測量実績は、地域にとっても価値があります。
会社を残すことが難しい場合でも、技術と顧客を残す方法を早期に検討する必要があったのではないでしょうか。
5. 同業・中小企業への示唆
測量業は、公共事業や土地取引を支える専門性の高い仕事です。
しかし、官公庁案件があるからといって、必ず収益が安定するわけではありません。
入札競争、発注時期、案件ごとの工数、修正対応、境界立会いの難易度によって、利益率は大きく変わります。
同業の中小企業にとっては、売上高ではなく、案件別採算、技術者稼働率、固定費、受注単価、返済原資を確認することが重要になります。
また、民間受注を拡大する場合には、不動産会社や士業、建設会社との紹介導線を作り、民間顧客に分かりやすいサービスとして設計する必要があります。
銀行や経営コンサルの視点では、追加借入で維持できるかどうかは、今後の受注見込みだけでなく、案件ごとに利益と現金が残るかで判断されます。
公共案件の実績があっても、返済原資が見えなければ、事業継続は難しくなるのではないでしょうか。
6. 今回の教訓
公共案件の実績があっても、案件別に利益が残らなければ測量業は支えにくい
今回の教訓は、官公庁向けの測量実績がある会社であっても、収益性が安定せず、返済原資が不足すれば、事業継続は難しくなるという点にあります。
共進測量設計は、1978年設立の測量業者とされ、官公庁から用地・境界の測量業務を受注していたとされています。
2021年6月期には年収入高約6900万円を計上していたものの、2025年6月期には約5600万円に後退していたとの情報があります。
また、散発的に欠損を計上するなど収益性は安定せず、茨城県信用保証協会による一部代位弁済が行われるなど、資金繰りに窮していたとされています。
負債は約1億2000万円とされ、年収入高に対して重い負担だった可能性があります。
測量業は、専門性が高く、地域に必要な仕事です。
しかし、現場工数、境界立会い、図面修正、役所調査、外注費を含めた案件別採算を管理できなければ、売上があっても利益は残りません。
銀行や経営コンサルの視点では、追加借入で維持できるかどうかは、公共案件の実績ではなく、今後の案件から返済原資が生まれるかで判断されます。
同社にとって重要だったのは、受注量の回復を待つことではなく、低採算案件を整理し、民間向けサービスを明確化し、現在の売上規模でも小さく黒字化できる体制へ早く切り替えることだったのではないでしょうか。
一言でまとめるなら、測量業は専門技術と公共実績があっても、案件ごとに利益と返済原資が残らなければ、長年の信用だけでは資金繰りを支えきれなくなってしまうと思われます。
